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金融機関での相続手続きに必要な書類 (2020.10.01)

金融機関の相続手続きに必要な書類

 

 

 

 

預貯金をしていた人が亡くなったことを金融機関が知ると、その方の口座は凍結され、以後は入出金ができなくなります。

口座に残された財産を相続するためには、金融機関での相続手続きが必要になってきます。今回は金融機関での相続手続きの必要書類についてまとめていきます。

<関連トピックス>
【相続開始時における不動産調査】
【意外と難しい戸籍収集】

金融機関での相続手続きでは、金融機関ごとに必要書類が若干異なってきますが、基本的に必要になってくる書類について解説していきます。

 

 

①戸籍・除籍謄本

亡くなった方の相続人を特定する必要があるため、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要になります

また相続人が生存していることを証明するために、相続人の現在戸籍も必要になります。

この戸籍・除籍謄本は法定相続情報で代用することも可能です。

 

②印鑑証明書

金融機関の相続手続きでは、相続人の実印での捺印を求められる書類があります。

また、それが相続人の実印であることを証明するために、印鑑証明書の提出も求められます。

印鑑証明書の使用期限は、多くの金融機関では取得日より6カ月以内とされていますが、3カ月以内の印鑑証明書を求めてくる金融機関もあります。

金融機関の数が多かったり手続きに時間がかかったりすると、印鑑証明書をもう一度取得しなければならない、なんてこともあります。

金融機関での相続手続きでは原本をその場で提示し、金融機関がそのコピーをとり、原本を返してもらうという形で手続きをしていきますが、まれに印鑑証明書だけは原本の提出を求められることがあります。

その場合にも再度、印鑑証明書の取得が必要になります。

 

③金融機関の手続き書類

金融機関の相続手続で記入をしなければならない書類は、一律に決まった形のものがあるわけではなく、金融機関ごとに形式が異なります。

亡くなった方が複数の金融機関に口座などをお持ちであった場合には、金融機関ごとに記入の仕方を確認しながら書類を記入しなければなりません。

●金融機関は電話が繋がりづらい
●営業時間は15時まで
●窓口に行っても待ち時間が長い

などの理由からこの作業が意外と面倒な作業となってきます。

 

法定相続分とは異なる割合で相続をする場合

法定相続分とは異なる割合で相続する場合とは、例えば、

●遺産分割協議によって法定相続分とは異なる割合で財産を相続すると話合いがまとまった場合

●亡くなられた方が遺言書を残していた場合

などがあり、その場合には、そのことを書面で証明しなければなりません。

上記例では、遺産分割協議書遺言書などがそれにあたります。

相続人がご自身で作成した遺産分割協議書、または、亡くなった方が残された自筆証書遺言を使い金融機関で相続手続きをしようとすると、財産の記載に漏れがあった又は誤りがあったなどの理由で、金融機関が手続きに応じてくれないこともしばしばあります。

関連トピックス
【遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~】

 


これら基本的な書類以外にも、金融機関によって必要となる書類が若干異なる場合があります。

役所での手続きとは違い、手続き方法が統一されていないことが金融機関での相続手続の煩わしい部分です。

何度も電話でやり取りするのが面倒、または忙しくて金融機関に行く時間がない、といった場合には、専門家に依頼するのも一つの手ではないでしょうか。

当法人では経験豊富な相続専門の司法書士が、金融機関と交渉をしながら手続きをしてまいります。

是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。

 

 

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貸金庫開扉と遺言書 (2020.09.25)

貸金庫開扉と遺言書

 

 

 

≪目次≫

1.遺言書が使えなかった事例

2.遺言の効力無効を未然に防ぐには

 

以前のトピックスで、自筆証書遺言と公正証書遺言について触れていきました。

【遺言】関連トピックスはこちら
【遺言が無効となったケース~公正証書遺言編~】
【遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~】
【遺言の種類と書き方~公正証書編~】
【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】

 

公証人や司法書士が関与する公正証書遺言は、法律の専門家がサポートしながら遺言を作成していきますので、文言に不備があることを限りなく少なくする効果があります。

一方、自筆証書遺言は法律に不慣れな方が独自に書いて行くため、文言に不備があったり、有効要件を欠いてしまうことが少なからず発生してしまいます。

今回のトピックスでは、自筆証書遺言で手続きがうまく進まなかった事例を基にお話しをしたいと思います。

遺言書が使えなかった事例

まず、下記の相続関係図をご覧ください。

上記の関係図において、被相続人Aは自分が亡くなった後に残された妻たちが相続手続きに困らないよう、一切の財産を妻に相続させる旨の自筆証書遺言を残して亡くなりました。

 

ところが、前述の一切の財産には預金及び銀行の貸金庫契約が含まれており、遺言書を持参した妻が手続きをしようとしたところ、遺言書に遺言執行者が定められていない事と、遺言執行者が貸金庫を開扉できる旨の文言がない事を理由に、当該遺言を用いての預金解約、貸金庫契約の解除を断られてしまいました

更に、銀行が言うには、遺言書に加えて、貸金庫契約の解除に関して相続人全員の実印と印鑑証明書を取り付けて欲しい、とのことでした。

 

法律解釈上、貸金庫の開扉手続きは、

・相続人の一人から請求が出来る説
・相続人全員の合意を持って応じるべきである説

と解釈が分かれるのですが、実務上の解釈としては、後者の考え方を採用している銀行が圧倒的多数です。

本来、一切の財産と遺言に謳っている以上、遺言執行者の選定についても、遺言執行者に対する貸金庫開扉の権限を与えていなくても全財産を相続した妻が一人で手続きが出来て然るべきなのですが、実務上は前述のとおり理不尽な結果を招いてしまいます。

また、そもそも、遺言書を銀行の貸金庫に大切に保管していた場合はどうなるでしょうか?

遺言書を取り出すためだけに、相続人全員の実印・印鑑証明書を準備するというおかしな現象さえ起こってしまいます

遺言の効力無効を未然に防ぐには

そこで、当法人では遺言書を書く際に預金解約等が含まれる場合には、まずは公正証書遺言の作成を提案し、さらにその本文の中に下記の様な文言を入れるように工夫をしております

 

第●条
1.遺言者は、この遺言の遺言執行者として妻○○(遺産を貰う人とすることが多い)を指定する。

2.遺言者は、前項の遺言執行者に対し、次の権限を与える。
(1)本遺言の執行に必要な場合には、代理人又は補助者又はその両者を選任すること。
(2)登記手続き、遺言者の有する預貯金等の名義変更・解約・受領、貸金庫の開扉・解約・内容物の取り出し、その他この遺言を執行するために必要な一切の行為を行うこと。

 

(1)は、遺言執行者の復任権といい、民放改正によって、令和1年7月1日以降に作成した遺言では、(1)の事項を記載していなくても問題はないのですが、遺産に貸金庫契約を含む場合は(2)の文言がないと手続きがスムーズに運ばない可能性が高くなります

また公証人は、遺言の効力が発生した時に実際に銀行と掛け合い手続きを代行する立場の人ではないので、大抵(2)の文言を入れ忘れることが多いです。

ご自身で独自に自筆証書遺言を書く際は、もっと不備が出てくる可能性は高いといえるでしょう。

 


いかがでしたでしょうか。

遺言は、遺言を完成させることを目的としてしまうと、失敗してしまいしがちです。

やはり、相続手続きに精通した専門家に、予見される事を想定してもらい、後々の手続きに残されたご遺族が困らないように作成していくことを心掛けるべきです。

当法人では、専門の相続チームが将来起こりうることを予見しながら、お客様のご意思を遺言にしっかりと反映させていきます。

まずは一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談下さい。

 

 

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相続欠格事例 (2020.09.10)

相続欠格事例

 

 

軽率な行動で相続権がはく奪される!?

皆様は、『相続欠格』という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

亡くなった方の配偶者、子や孫等、一定の要件を満たせば法律上相続権が発生します。

しかしながら、その相続権を持った人が被相続人を殺してしまったり、自己にのみ有利となる行為(強迫して遺言を書かせる等)をしてしまう等、その他軽率な行動をとり、民法で定める一定事由に該当してしまうと、法律はその人から相続権をはく奪してしまいます。

これを相続の欠格事由(相続欠格)と言っていきます。

では、相続の欠格事由とはどういったことが該当するのでしょうか?

 

民法では、「被相続人又は先順位の者を故意に死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者は、相続人となることは出来ない。」と規定しており、この規定以外にも相続人となり得ない事由を規定しています。

前記の、被相続人等を殺そうとする行為は欠格事由に該当し、相続人になれないことは当然ですが、その他にもうっかりしたことで欠格事由に該当してしまうケースがあります

今回は、当法人の司法書士が相談を受け、実際に欠格事由に該当した事例を紹介します。

 

 

意図せず相続欠格となってしまった実例

下記の、相続関係図をご覧ください。

ご相談者は、被相続人の奥様で、被相続人が自筆で書いた遺言書をもっており、この遺言書を使って不動産の名義変更や預貯金の解約等諸々の相続手続きをしてほしいとの相談でした。

 

自筆証書遺言の形式的有効要件として、

●全文自署
●日付の記載
●氏名の記載
●押印

が必要となりますが、この遺言、日付の記載がなかったのです。

(自筆証書遺言の詳細は【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】をご覧下さい。)

ですので、当該遺言は無効で手続きには一切使うことが出来なくなり、6名のご兄弟を含めた相続人全員で遺産分けの話し合い(遺産分割協議)をし、手続きを進めなくてはいけないことをご説明したところ、

疎遠な兄弟が複数いるし、被相続人と築き上げてきた遺産のいくらかを相続分として兄弟達に分配しないといけないことに気を悪くした相談者は、

『じゃあ、私がここに日付記載すればいいんでしょ。亡くなる少し前に書いてくれたから、平成●年●月●日て書きますね。』

と、司法書士の制止を振り切り、遺言書に日付を記載してしまったのです。

 

これは、民法891条5項にいう、遺言書の偽造ないしは変造に値し、欠格事由に該当します

目の前で、偽造行為を目の当たりにしてしまった当法人の司法書士は、お仕事の依頼を断るしかありませんでした。

因みに、この相談者は、相続欠格事由に該当したため、一切の相続権をはく奪されてしまいます。

日付の記載さえしなければ、最低でも遺産の4分の3相当は取得できたはずなのに、軽率な行動をとってしまったが故に、一切の財産を相続することが出来なくなりました。

 


自筆証書遺言の有効性の判断や、実務上手続きに利用できるかは、非常に難しい問題で、専門家に見てもらうことが一番有益です。

是非、まずは当法人までご相談下さい。

 

 

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遺産分割の方法 (2020.08.28)

 

 

相続が開始すると、遺言書がある場合には遺言書どおりに遺産を分ける流れとなりますが、遺言書がない場合には、相続人の話し合いによって遺産の分け方を決定します。

これまでのトピックスで、遺産分割協議について何度か取り上げてきました。

⇒【遺産分割と相続時精算課税制度を利用した贈与】
⇒【遺産分割協議と債務整理手続き】
⇒【遺産分割協議と行方不明者】
⇒【数次相続と法定相続分の行方】

今回は実際に遺産分割する際の方法について、改めて紹介していきたいと思います。

遺産分割の方法には大きく分けて3つの方法があります。

①現物分割

②換価分割

③代償分割

 

①現物分割

現物分割とは不動産、現金などの財産を「そのままのかたちで相続する」という分割の方法です。

例えば自宅を長男が相続し、預貯金は次男が相続、株式は長女が相続する場合などです。

現物分割

≪メリット≫

●手続きが簡単で分かりやすい
現物分割は、基本的に「誰か1人が対象の遺産を引き継ぐ」だけなので手続きが簡単です。

●遺産をそのままの形で相続することができる
被相続人が残した自宅などを、形を変えずに残しておくことができます。

 

≪デメリット≫

●完全に平等に分けることが難しい
現物分割は、相続人間で不公平になりやすい問題があります。例えば遺産が不動産しかない場合、長男が1人で不動産を取得すると他の相続人は不満を感じるでしょう。

他に車や動産、株式などの財産があっても不動産と比べると価値が低いケースも多々あります。

現物分割では完全に公平に分割するのは困難なケースが多いのです。

 

②換価分割

換価分割とは、「遺産をいったん売却してその代金を相続人で分ける」という分割の方法です。

例えば、被相続人が所有していた土地と建物を売却し、その売却代金の5,000万円を妻が2,500万円相続し、子二人が1,250万円ずつ相続するという場合です。

換価分割

≪メリット≫

●平等に分割することが可能
遺産を売却し金銭にするわけですから、1円単位で平等な分割をすることができます。

 

≪デメリット≫

●被相続人の遺産をそのままの形で残しておくことができない
亡くなられた方や自分の実家を売却するのは心苦しい、と思う方もいらっしゃるかと思います。

●費用や手間がかかる
遺産をいったん売却するという手続きが入りますので、他の分割方法に比べて費用と時間がかかることがあります。

●相続人に税金がかかることがある
不動産を売却してそれによって利益を得た場合、不動産譲渡所得税という税金が課されます。

 

③代償分割

代償分割とは、「遺産を一人の相続人が多く取得し、その代わりに遺産を少なく相続した相続人に対して金銭を支払う」という分割の方法です。

例えば、相続財産が5,000万円相当の不動産と預金1,000万円だった場合(相続人は長男と次男)に、「長男が不動産を相続し次男が預金1,000万円を相続した上で、長男は次男に2,000万円の現金を支払う」といった分割方法です。

代償分割

≪メリット≫

●遺産をそのままの形で残すことができる
換価分割のように遺産を売却するわけではないので、被相続人の遺産をそのままの形で残しておくことができます。

 

≪デメリット≫

●代償金を支払う相続人にお金がなければならない
代償金は遺産を相続する相続人が支払わなければなりませんので、その人に支払うお金がなければすることができません。

●後に争いになる可能性がある
代償金を支払うと決めたのに期限になっても支払いをしてくれない、などの理由で争いに発展する可能性もあります。

 


以上、三つの遺産分割の方法についてご紹介致しました。

いずれかの方法によらなければならないということはなく、それぞれを組み合わせるといった方法も可能です。

 

遺産分割では相続人間の利害が対立し、争いになるケースもあります。そうならないため、一度専門家に相談することをお勧めします。

当法人では経験豊富な相続専門の司法書士が、税務などの周辺知識も踏まえた上で、最適なコンサルティングをご提供致します。

是非一度、お気軽にご相談ください。

 

 

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相続預金を使ったファイナンシャルプランニング (2020.08.27)

相続預金を使ったファイナンシャルプランニング

 

 

≪目次≫

1.相続時におけるファイナンシャルプランニング

2.相続人の意向を組んだスキーム実例

以前のトピックスで、相続と生命保険・遺留分と生命保険を取り上げました。

【遺産相続と生命保険の関係性】

【生命保険金が貰えない?保険を組む際の注意点】

【生命保険金の受給権の行方】

【遺留分と生命保険】

今回のトピックスでは、相続財産である預貯金原資を使ったファイナンシャルプランニングをテーマに取り上げてみたいと思います。

1.相続時におけるファイナンシャルプランニング

相続で預貯金を取得する際、その額が数千万円、時には1憶円を超える場合もあります。

相続する預貯金が数千万円ある場合、そのお金の使い道が分からないと言ったご相談を受けることが良くあります。

実際に、当法人のファイナンシャルプランナーの資格を有する司法書士が提案した事例を基に、そのスキームの一例をご紹介致します。

 

下記の相続関係をご覧ください。

相続関係と遺産を基本情報として、相談が開始し、当初は亡くなった母の生前の意思を組んで、長男・二男で遺産を2分の1ずつ取得する方向で話が進んでいきました。

ところが、電話や面談を重ねる内に、このご家庭に長年潜んでいたある悩みが、当法人の司法書士に、二男様から打ち明けられます。

 

『先生、先生に紹介して頂いた税理士の先生から、自宅は兄が取得することで小規模宅地の特例を使い、評価額を8割圧縮し、残った預金を私が少し多めに取得することで兄と結果的に2分の1ずつ遺産分割をすることは理解できました。

しかし、兄は定職についておらず、金銭面で不安がある為、将来4~5年後には相続した自宅を売却しかねません。

また、兄は浪費癖が酷く、週末になると朝まで飲み歩き、高級クラブから毎月数十万円の請求が来ると言った始末で、生前はそれを母が払っていたんです。

見かねた母は私に相談し、自分が死んで相続が発生したら、遺産は折半してもらいたいが、兄の財産の管理は私にするようにときつく言われております。

また、自宅は売却等はせずに守ってほしいとの意向も聞いています。

兄は結婚しておりませんが、もしかしたら単純な兄のことなので、お金を持つとクラブ等で悪い相手に騙される恐れも危惧しております。

どのように進めるのが一番良いでしょうか?』

2.相続人の意向を組んだスキーム実例

この事案において、二男様には、相続税を節税することよりも、兄の財産管理と兄が取得した遺産を散財させたくないと言った意図があり、遺産分割に、兄の相続後のファイナンシャルプランニングと財産管理を含めて提案しなければなりません。

通常の司法書士業務の範囲でもないので、周辺知識の浅い司法書士ならお手上げ、といったようなご相談です。

なお、長男様には、遺産分割のことは全て弟に任せるが、キャッシュで3000万円程は受け取りたい。

自宅には拘りが無いので、近いうちに引っ越しをする予定との意図がありました。

そこで、当法人の司法書士が、遺産分割及び長男様のファイナンシャルプラン、財産管理を念頭に下記のスキームを提案しました。

(ご意向を優先し相続税のことは度外視し、当事者と被相続人の意図を最大限組んだスキームとなっております)

 

①自宅不動産は二男が取得

(念のため、長男が引っ越しをするまでは、自宅の使用収益を認める旨の使用貸借契約書を締結しておく)

 

②相続預金1憶円相当を長男が取得

 

③上記②の内、7000万円相当は年金保険として保険に組み替え

65歳から月々数十万円の定額給付が終身ででるようにしておきます。

また、保険契約者を長男にしてしまうと、いつでも解約することが出来るため、

保険契約者=二男、被保険者=長男、受取人=長男、保険料負担者=長男との契約形態を提案いたしました。

 

④家族信託の提案

最後に②の内の3000万円は、委託者=長男、受託者=二男、受益者=長男、残余財産の帰属権利者を二男とする民事信託契約(通称で家族信託と言われているものです。)を提案いたしました。

詳細としては、信託契約後、初年度及び二年目までは受託者から受益者に1000万円を限度に、受益者が求める金銭を受託者が月々又は一括にて給付し、3年目以後は月30万円を限度に定額給付する旨の契約内容です

 

③及び④について、全てを民事信託契約で二男様が長男様の財産管理をすることも検討しましたが、額が額だけに、長男様から異論を唱えられる可能性があります。

委託者と受託者の年齢が近い為先に受託者が死亡してしまうことも懸念し、死亡のリスクのない保険会社に大部分の金銭を預けることを提案しました。

また、金銭で管理しておくよりも、終身年金保険に組み替えておいた方が、将来受け取れる額が大幅に増えるメリットを考え、上記の提案に結びつきました

 

相続手続きを終え、上記の財産管理及びファイナンシャルプランニングを提案通り実行し、

長男様は『一気に浪費してしまうリスクが回避できた。』

二男様は『兄の浪費をこのスキームで回避が出来、兄の老後の資金計画もでき、将来の兄の生活に支障が出ないことに安心した。また、なにより、母が生前考えていた意志を実現出来た。』

と大変ご満足いただけました。

この案件では、提携している保険会社の助言等も多く頂きましたが、かなり難易度の高い提案をすることにより、結果的に満足していただける結果となった事案で、思い出深い事案です。

 


いかがでしたでしょうか。

当法人では、相続手続きを受ける際、相続専門の司法書士が専任担当致します。

相続手続きは、各ご家庭が抱える悩みが全然違っており、税務の知識や財産管理、時には今回のようなファイナンシャルプランニングも必要なケースも出てきます。

ただ単純に自宅の名義を変えるだけ・預金の解約をするだけの業務ではなく、付加価値を付けてサービス提供していきます。

お悩みの方は、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、是非お気軽にご相談下さい。

 

 

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遺留分の放棄② (2020.08.06)

遺留分の放棄②

 

 

 

前回のトピックスで、相続発生後の遺留分の放棄について取り上げました。

⇒【遺留分の放棄①】

今回のトピックスでは、相続開始前の遺留分の放棄をテーマにお話をさせて頂きます。

 

相続発生前でも遺留分放棄はできる?

被相続人が亡くなる前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要となり、遺留分を放棄する方が家庭裁判所に申立をして手続きをする必要があります

被相続人が亡くなった後の遺留分の放棄と比べて、手続きのレベルは格段に上がり、思うような結果が得られないことも少なくありません。

この、被相続人が健在中の遺留分の放棄は、限定承認の手続きと並び、相続手続きの中で極めて難易度が高い手続きと言っても過言ではないでしょう

それでは、当法人の相続チームの司法書士が、実際に手続きをした事例を基に手続きの概要を見ていきましょう。

下記の相続関係を参照してください。


上記の相続関係において、遺言者A様は、『生前にX土地を長女C様に生前贈与をし、自分の亡き後は自宅を長男B様に相続をさせたい。』と考え、

●自宅を長男Bに相続させる旨の遺言を書きたい

●長女Cには今すぐ贈与登記を実行したい

と、当法人の司法書士に相談を持ち掛けました。

 

この相談を受け、当法人の司法書士は、

●生前にX土地を長女Cに贈与すると、多額の贈与税及び登記費用、不動産取得税がかかる

相続開始時において、長女Cから長男Bに対して遺留分侵害額請求権の行使をされる恐れがある
※長女Cが生前贈与を受けていれば、特別受益を主張して遺留分請求に対抗できる余地はある

 

上記を懸念して、遺言内容を『自宅は長男B、X土地は長女C』との、遺留分を確保した遺言作成を提案しました。

しかし、遺言者A様は自己の相続開始後、遺言内容が実現出来るとも限らず、将来長男長女の関係がどうなるかも分からないことから、

『生前に長女Cに遺留分相当額を確保した贈与をする代わりに、自分の死後に長男Bが自宅相続する事について、一切異論を唱えてほしくない。』

という強い願望があり、どうしても上記のスキームで手続きをしてほしいととの事でした。

 

そこで改めて、当法人の司法書士は下記の内容を提案しました。

①長男Bに自宅を相続させる旨の遺言を書く

②長女Cに生前贈与としてX土地を贈与する
(但し、贈与税率に比べ相続税率が安くなることから、相続時精算課税制度の選択2500万円までは贈与税が非課税になる)

③遺言者Aが生前中に、長女Cに遺留分放棄の許可審判を家庭裁判所に申立てもらう

 

上記の内、③が今回のテーマであり、手続きに非常に苦慮しました。

なぜなら、遺言者生前の遺留分放棄は、前述のとおり家庭裁判所の許可が必要であり、この許可は各家庭裁判所の裁判官の裁量が大きく影響し、一定の基準はありますが、画一的な許可基準がないからです

一定の基準としては、下記の基準があります。

①遺留分放棄者の自由意思による申立であること
②遺留分放棄に合理性・必要性があること
③生前贈与等の代償性があること

 

上記の許可基準で、最も重要視されるのは①の自由意思に基づく申立です。

なぜなら、本来遺留分とは、遺言によっても侵害出来ない、法律で認められた最低限の相続分であり、遺言者の圧力でその遺留分を失ってしまうという、不合理な結果を避けるためだからです

幸い、今回のケースでは、遺留分4分の1相当のX土地の生前贈与があり、贈与税の申告書を申立に添付した上、長女C様も遺留分請求に関しては全くといっていいほど興味を示していなかった為、申立書に自由意思であることを存分にアピールしていく事が出来ました。

自由意思による申立であることの間接証拠として、見返りとして既に生前贈与を受けている等の事情を細かく審理され、実際の許可審判がなされます。

したがって、単に遺留分を事前に放棄しておきたいからとか、結婚の許可を親からもらう為に遺留分を放棄するとか言った事情で、遺留分の放棄が認められることはまずない、と言って過言ではありません。


いかがでしたでしょうか。

遺言者の生前中に遺留分の放棄の許可審判の申立などは、相続専門の司法書士又は相続専門の弁護士に相談をされることをお薦め致します。

当法人では、1000件近くの相続手続きを手掛けてきた相続専門の司法書士が在籍する相続専門チームがあり、このような特殊な事例にも対応することが可能です。

お悩みの方は、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、是非一度お気軽にご相談下さい。

 

 

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遺留分の放棄① (2020.08.04)

 

 

以前のトピックスで、遺言と遺留分に関するトピックスをいくつか上げさせて頂きました。

≪遺留分に関するトピックス≫
⇒【遺言書と遺留分請求】
⇒【遺留分制度の見直し】
⇒【遺留分と生命保険】

今回は、実際に当法人の司法書士が相談を受け、扱った特殊な事例として、遺留分の放棄をテーマにお話をさせて頂きたいと思います。

 

そもそも遺留分とは

まず遺留分とは、法定相続分とは別個の権利で、一部の相続人(相続人が兄弟姉妹・甥姪には遺留分は認められない)にのみ認められた、最低限保障されるべき相続分のことをいいます

従って、被相続人が遺言や家族信託を組成する中で、特定の相続人のみに遺産を承継させたりする場合(他の相続人の取り分が一切ない場合)に問題になります。

通常、遺留分は相続人が直系卑属(子・孫)であれば法定相続分の2分の1は保障されます。

また、相続人が直系尊属(親・祖父母)のみである場合は3分の1が保障されます。

遺留分放棄のやり方には、被相続人の生前中にするものと、被相続人の死後にするものに分けられますが、今回は、被相続人死亡後の遺留分放棄についてご説明します。

 

 

相続発生後の遺留分放棄の実例

下記の相続関係において、被相続人A様が遺産の全てを長男B様に相続させると遺言を残して死亡しました。

長男B様は、被相続人A様が書いた自筆証書遺言を片手に当法人の司法書士に相続手続きを依頼。

長男B様は、長女C様に4分の1(法定相続分2分の1の2分の1)の遺留分が発生することを知っており、どうすれば一番良いだろうか、と相談をされました。

被相続人の死亡後の遺留分の放棄の手続きには、法律上特に決まった要式行為(公正証書や裁判所への申立でするなど)を求められておらず、受遺者等への意思表示のみで足りるとされています。

この意思表示は口頭でも足りますが、実務上は、後日言った言わないのトラブルになったり、気が変わったりした時など、遺留分請求された場合に対抗する措置として、きっちりと書面に残して証拠保全をしておいた方が良いでしょう

上記の事実関係及び法律効果を熟考した末、長男B様に下記の方法をご提案しました。

 

①長女C様に対して遺留分の放棄の意思確認をすること
②長女C様に相続放棄手続きをしてもらうこと

但し、②の相続放棄手続きは、ある程度長女C様側で裁判所に申し立てをしてもらい一定のやりとりを裁判所としなければならない点や、相続放棄の審査が終了するまでの間(通常1か月)は申立を取り下げることができる点(手続き終了後は撤回は出来ません…民法919条1項)等のデメリットを説明しました。

相続放棄申立中に、万が一、長女C様の気が変わり申立を取り下げられると、話の流れは大きく変わります。

 

最終的に長男B様は、上記提案のうち、①の「遺留分放棄の意思表示を長女C様にしてもらうこと」を決定されたので、後日、当法人の司法書士が長女C様に、相続についての意向確認の手紙を送り、コンタクトを取りました。

結果、長男B様と長女C様の話し合いの末、長女C様は被相続人との関係性が疎遠であったこと、及び長男B様が献身的に被相続人の介護をしていた事実を受け、遺言の内容及び遺留分の一切を放棄するとの意思表示を確認出来たため、話し合いの当日、当法人で作成した遺留分放棄証書に実印を頂戴し、証拠保全を完了しました

最終的には、遺言の検認手続き及び遺言通りの相続手続きを完了し、加えて遺留分権利者からの遺留分請求への対抗措置を準備することができ、長男B様は安堵の表情を浮かべておりました。


いかがでしたでしょうか。

実は相続発生前でも遺留分の放棄をすることができますが、それについては【遺留分の放棄②】にて取り上げておりますので、こちらも併せてご覧ください。

相続手続きには、それぞれのご家庭に違った悩みがあり、一件一件問題解決の方法が違います。

当法人には、様々な問題解決をしてきた相続専門の司法書士が在籍しております。

今回取り上げたような、遺留分放棄等滅多に関わらない案件にも積極的にトライして解決に導いていきます。

是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談下さい。

 

 

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自筆証書遺言と物件の同一性 (2020.07.31)

自筆証書遺言と物件の同一性

 

 

 

≪目次≫
1.検認を受けた遺言が使えない?!
2.財産等の特定方法
3.問題点
4.遺言の内容が不明確な場合の基本的な考え方
5.対応方法

 

以前のトピックスで、自筆証書遺言について取り上げました。

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】
⇒【遺言書の検認】

 

公正証書遺言と法務局で保管された自筆証書遺言(令和2年7月10日より保管制度開始)以外の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

遺言書の検認を受けていなければ、不動産の名義変更登記の申請、預貯金解約等の相続手続きをすることができないからです。

しかし実のところ、検認を受けたからといって、その遺言書を使って不動産の名義変更等を行えるとは限りません

遺言書の記載内容が明確でないために、遺言書だけではその内容を実現できないケースがしばしば見受けられるのです。

今回は、そのような事例を1つ紹介いたします。

1.検認を受けた遺言が使えない?!

 

≪事例≫
相続人からの遺言書に関するご相談で、お亡くなりになった方は生前に自筆証書遺言を作成していました。
遺言書はすでに検認手続き済みとのことです。

遺言には「自宅はAに相続させる」「別宅はBに相続させる」と記載されていました。

住所などの記載はないものの、以前よりお亡くなりになった方から遺言内容を聞いていたため、相続人の間では対象物件がどれになるのか合意済みで、特に争いはありません。

しかしこの事例、遺言書に基づく不動産の名義変更について、事前に登記所に照会をかけたところ、受理できないとの回答を受けました

いったいどういうことなのでしょうか?

 

2.財産等の特定方法

不動産の名義変更を登記所に申請する場合、対象となる物件を正確に特定しなければなりません。

今回のケースであれば、登記簿謄本の記載に従って、少なくとも

●土地なら所在、地番
●建物なら所在、家屋番号

を遺言書に記載する必要があります。

これらの情報を知るには、不動産ごとの登記簿謄本の確認が必要です。

 

3.問題点

上記で挙げた情報がないと、遺言書で書かれている不動産と、名義変更の対象となる不動産が同じ物件なのか登記官が判断できず、遺言書を使って不動産の名義変更することができないといった不具合が生じます

しかし、ご自身で作成する自筆証書遺言の場合、こういった形式的な事情を知らずに住居表示(=住所)で記載されることが多く、この住居表示と対象物件の所在・地番等が同一の物件であることを申請者側で示さなければなりません

今回の遺言書では「自宅」「別宅」としか記載されていないため、まずはその所在等を明らかにします

また、ここでいう自宅・別宅とは建物だけなのかそれとも敷地である土地も含むのかも併せて検討が必要となります。

 

4.遺言の内容が不明確な場合の基本的な考え方

遺言書の内容が不明確な場合、特定の条項の解釈をどのように行うべきか、下記の最高裁判例があります。

≪最高裁判決 昭和58年3月18日≫

遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し、当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。( 一部抜粋 )

なんだか難しい表現ばかりで解りづらいですよね。

要約すると、『遺言書の特定の部分が不明確であった場合、杓子定規に文言の字面だけで判断するのではなく、遺言書の全体との関連性や諸事情を考慮することも認めていますよ』という事なのです

よって、内容が不明確な遺言がある場合には、この判例を前提として検討する必要があります。

 

5.対応方法

遺言書・対象不動産の登記簿謄本・お亡くなりになった方の戸籍附票謄本などを集め、各不動産の所在地を管轄する登記所に事前相談を行います。

この際、遺言の対象となる不動産と、名義変更の対象として提示した不動産が同じものかどうかの判断は、登記官に委ねられます

よって、案件によって、相続人全員の署名・実印済み上申書(印鑑証明書付き)の追加提供を求められたり、遺言書による名義変更を受け付けてもらえないといったことが起こるのです。

自筆証書遺言はご自身だけで気軽に書けるメリットがあります。

しかし、作成時に適切なサポートがないと、ご自身の想いを望んだ形で遺せないという大きなデメリットも存在する、といった事例でした。

 


いかがでしたでしょうか。

上記のような事例はほんの一例であり、実際には検認手続きをするまでもなく無効と判断されてしまった件や、登記には問題なく受理されたが、金融機関の解約手続きでかなり危うい状況に陥りそうになった件(最終的には何とか受理されましたが、個人でお手続きされていたらまず突っぱねられていたでしょう。)なども、実は多く見受けられます。

大切なご遺産を確実な形で遺したいとお考えの方は、まずは専門家へご相談する事をお奨めいたします。

遺言をお考えの方は是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。

 

 

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遺言書の検認 (2020.07.22)

遺言書の検認

 

 

 

≪目次≫
1.検認とは?
2.検認手続きをしなかったらどうなる?
3.検認手続きの流れ
4.自筆証書遺言の落し穴

 

以前のトピックスで、公正証書遺言と自筆証書遺言について取り上げました。

遺言に関するトピックス
⇒【遺言の種類と書き方~公正証書編~】

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】
⇒【遺言が無効となったケース~公正証書遺言編~】
⇒【遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~】
⇒【自筆証書遺言書保管制度について】

 

公正証書遺言と法務局で保管された自筆証書遺言(令和2年7月10日より法務局での保管制度開始)以外の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

遺言書の検認を受けていなければ、不動産の名義変更登記の申請、預貯金解約等の相続手続きをすることができないのが通常です。

今回のトピックスで改めてこの『検認』について触れていきましょう。

 

1.検認とは?

自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した人が、自分の都合のいいように遺言書の内容を変更したり、遺言書を破棄したりすることを防止するため遺言書の検認が行われます。

検認手続きでは、相続人が集まって遺言に書かれている内容を確認し、遺言書をその時の状態で保存します。

検認手続きを終えると、検認済証明書を発行してもらえるので、裁判所で検認を受けた遺言であることを証明できます

 

【検認の申立てをする人】

 

・遺言書を保管していた人
・遺言書を発見した相続人

相続開始を知った後、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求なければなりません。

 

【申立先】

遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申立てを行います。

 

【費用】

遺言書1通につき、収入印紙800円

・連絡用の郵便切手(各家庭裁判所によって異なります)

 

【添付書類】

 

・遺言の検認申立書
・遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の(現在)戸籍謄本
・相続関係が確認できる戸籍謄本
・受遺者がいる場合には受遺者の戸籍謄本

戸籍謄本は、法定相続情報一覧図の写しを提出すれば、基本的には提出する必要はありません。

但し、ケースによっては一部の戸籍謄本等の提出を求められることがあります。詳細は管轄の裁判所の指示に従ってください。

 

2.検認手続きをしなかったらどうなる?

検認手続きをしていなかった場合、最終的に名義変更等の遺言執行をすることが出来ません。

なぜなら、自筆証書遺言はそのままでは被相続人本人の自署による遺言書かどうかの判断出来ない為、登記や預貯金解約等のほとんどの名義変更手続きにおいて、遺言書の検認後に裁判所から発行される遺言書検認済証明書遺言書検認調書謄本の提出を求められるからです

検認をせずに遺言執行手続を行った場合、5万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります。

また、封印のある遺言書は、検認時に家庭裁判所で相続人の立会いの上で開封する必要があり、こちらも勝手に開封してしまった場合、5万円以下の過料が課される可能性があります。

 

3.検認手続きの流れ

 

①家庭裁判所に検認申立て
   ↓
②相続人・受遺者への検認期日通知
   ↓
③遺言書の検認
   ↓
④検認調書作成
   ↓
⑤検認済証明書の交付請求

 

①家庭裁判所に検認申立て

自筆証書遺言を発見したら、まずは相続人や受遺者から家庭裁判所に検認申立てをする必要があります。

申立てから検認期日(検認を行う日)が開かれるまでに約1ヶ月程度かかります。

 

②相続人・受遺者への検認期日通知

相続人・受遺者には、申立後に裁判所から検認期日が通知されます

申立人以外の相続人が検認期日に欠席した場合にも、検認手続きは行われます。

 

③遺言書の検認

期日では申立人から遺言書が提出され、出席した相続人の立会いのもと封筒を開封し、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などの検認期日現在における遺言書の内容を確認します。

このとき相続人に対し、遺言が自筆であるか、押印が遺言者のものであるかどうかを確認されます。

 

④検認調書作成

検認手続き後、検認年月日・立会人の氏名・住所・立会人の陳述の要旨等が記載された検認調書が作成されます

 

⑤検認済証明書の交付請求

遺言執行後に登記や預貯金解約等の名義変更をする上で、遺言書に検認済証明書がついていることが必要となるケースが大半ですので、検認済証明書の交付を請求します

検認済証明書の交付は、検認期日が行われた日のうちに請求することができます

 

 

4.自筆証書遺言の落し穴

家裁での遺言検認手続きが無事終わり、ようやく様々な手続きを進めていこうとした時、大きな落し穴が潜んでいる点に注意する必要があります。

 

①時間がかかる

遺言書の検認申立をするには戸籍謄本等の必要書類を収集しなければなりません。

相続人が多数いたり、被相続人が何度も転籍していたりすると、戸籍の収集だけでも1ヶ月以上かかることもあります。

ようやく必要書類がすべて集まり、いざ検認申立てをしても、検認期日を迎えるまでに約1ヶ月の期間がかかります

その間、相続に関する手続きが止まってしまいます。

ここで注意しなければいけないのが、検認に時間がかかってしまったからといって、相続放棄の申述期限(相続発生後3ヶ月)や相続税の申告期限(相続発生後10ヶ月)などは延長されない、という点です

その後の相続手続きの中で思わぬ債務が発覚したが相続放棄の申述期限を過ぎてしまった、などといった事態に陥っては洒落になりません。

 

また、預貯金などの口座は被相続人の死亡が判明すると凍結されます。

被相続人の口座が凍結されてしまうと、当然その口座での引き落としや引き出しは一切できなくなります。

検認手続きが終わるまで相続手続きが滞ってしまうと、残された相続人の生活に支障が出てしまう可能性もあります

※民法改正により、法定相続人であれば一定の要件を満たせば「預貯金の仮払い請求」が可能になりました。(令和元年7月1日施行)

⇒【預貯金の仮払い制度】

 

②遺言内容の有効性は別問題

多くの人が考え違いをしてしまうのですが、検認を受けたからと言って、その自筆証書遺言が有効であると確定するわけではありません

検認の目的はあくまで証拠保全です。

要するに、この遺言書は、裁判所でこの期日に検認しましたよ。という事実を証明できるだけであり、その後の相続手続きでその遺言書の内容通りに手続きを進める事を保証しているわけではないのです

せっかく時間をかけて検認申立を終えても、遺言書としての効力が無ければ元も子もありません。

 

③費用がかかるケースもある

遺言書の検認申立てをする際、多くの必要書類の収集や申立手続の書面を用意する必要があります。

申立人の事情により本人が手続きを進められない場合、司法書士等の代理人に依頼する必要があれば、その依頼費用がかかってきます。

 


いかがでしたでしょうか。

自筆証書遺言は公正証書遺言と比較して気軽に書けるメリットがある反面、その後の相続人や受遺者の手続が煩雑になる事や、何よりご自身の想いを望んだ形で遺せないという大きなリスクがあります。

当法人では、遺言を検討されている方にはやはり、公正証書遺言をお勧めしています。

多少のお費用はかかってしまいますが、相続に関して豊富な知識を持つ専門チームが、ご依頼者様の意思を的確に反映し、煩雑なお手続きをしっかりとサポートさせて頂きます。

また、どうしても自筆証書遺言を遺したいという場合でも、遺言内容へのコンサルタントという形でサポートさせて頂きます。

遺言をお考えの方は是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談ください。

 

 

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特別寄与料について (2020.07.07)

特別寄与料について

 

 

 

≪目次≫
1.特別寄与とは?
2.特別寄与料を請求できるのは?
3.誰に請求できるのか?
4.特別寄与料はどのように決定するのか?
5.いつまで請求することができるのか?

 

1.特別寄与とは?

寄与分とは、亡くなった方の財産の維持または増加について特別に貢献した相続人は、その分法律に定められた相続分(法定相続分)より多くの財産を取得することができる』という制度です。

この制度は、相続人が複数いる場合の、相続人間の不平等を是正するために設けられました。

例えば親の家業に従事して親の財産を増やした人や、病気の親を介護して財産の減少防止に貢献した人がいる場合に、法定相続分より多くの財産を取得できるという制度です。

但し、これまで、寄与分を受けられるのは相続人に限られまていました。

つまり、例えば亡くなった方の息子の嫁が生前に看護していたとしても、寄与分を主張することはできなかったのです

これでは相続人以外が特別の寄与をしても報われないことになってしまいます。

そこで相続法が改正され、2019年7月1日以降に開始した相続については、相続人以外でも特別寄与料を請求することができるように条件が緩和されました

 

2.特別寄与料を請求できるのは?

特別寄与料を請求できるのは、

亡くなった方に対して無償で療養看護その他の労務の提供したことにより、

亡くなった方の財産の維持または増加について特別の寄与をした、

亡くなった方の親族

が対象となります。

 

①無償で療養看護その他の労務を提供

先に例で挙げた、亡くなった方の息子の嫁が無償で介護してきた場合などが該当します。但し、介護の際に対価として金銭などを受け取っている場合には、特別寄与料を受け取ることはできません

 

②財産の維持または増加に貢献したこと

例えば亡くなった方の療養看護することによって訪問看護等のサービスを利用せずに済めば、その分財産の減少を防止したといえるでしょう。

 

③亡くなった方の親族であること

親族とは、6親等内の血族、3親等内の姻族、配偶者の範囲に属するものをいいます。

 

3.誰に請求できるのか?

特別寄与料は亡くなった方の相続人に対して請求することができます。

相続人が複数いる場合には、その相続人の相続分に応じて請求をすることができます。

特別寄与料が100万円あり、各相続人の相続分がAさんは2分の1、Bさんは4分の1、Cさんは4分の1であるとします。

この場合、Aに対しては100万円の2分の1である50万円を、BとCに対しては100万円の4分の1である25万円をそれぞれ請求することができます。

 

4.特別寄与料はどのように決定するのか?

特別寄与料は特別寄与者と相続人との協議によって決まります

協議によって決まらない場合は、家庭裁判所に協議に変わる審判を請求することができます。

その場合、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料を定めることができる、とされています。

特別寄与料を認めてもらうには、介護をした証拠を残しておくことも重要です。

「◯月▲日、8時から17時まで~のようなお世話をした。」

といった詳細な介護日誌を付けておくと認められやすくなります。

個人的な生活の記録を記した手帳や日記でも、介護の様子をメモしておくことで証拠に成り得ます。

 

5.いつまで請求することができるのか?

前述の特別寄与料を請求する場合には、

・特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六ヶ月を経過したとき
又は
・相続開始の時から一年を経過したとき

までとなっています。

 

これは、特別寄与請求権者は療養看護等していることから、比較的容易に被相続人の死亡を知ることが出来る場合が多いと考えられ、また、金銭の支払請求を受ける可能性がある相続人の立場を考慮すれば、できるだけ早期に法律関係を確定させる必要があるとの考えから上記の期間制限が設けられました。

 

相続が発生してから六ヶ月、一年という期間は、思いの外あっという間に過ぎてしまいます。

直接的な相続人ではないが療養看護等を通して被相続人の財産の維持増加に寄与した、と考える親族の方は、出来るだけ早めに各相続人に対して、特別寄与料を請求又はお早めに協議をすることをお勧めします。

 

 

 

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