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遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~ (2020.05.01)

遺言が無効となったケース①

 

 

前回までのトピックスで、遺言の種類と書き方について取り上げてみました。

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】はこちら

⇒【遺言の種類と書き方~公正証書編~】はこちら

今回は、過去に扱った事案から、遺言の有効・無効の判断について触れてみたいと思います。

 

遺言書が無効となってしまった事例

自筆証書遺言の場合、形式的有効要件として、全文自署(一部財産目録は除く)・日付・氏名・押印が無ければ無効となることは、前回までの記述で触れていきましたが、過去に扱った事案で、自筆証書遺言が実質的に無効となったケースを取り上げて行きたいと思います。

自筆証書遺言に限って言えば、改ざんや偽造が立証され無効となるケースは稀にあります。

以前に取り扱った事案で、下記のようなケースがありました。

 

遺言書が無効となってしまった事例

90歳の老人が2016年8月20日に死亡し、遺言が後日、自宅金庫から発見され、その字体が明らかに90歳の老人には当然書けないだろうと思われる、楷書で書かれていたケースです。

その遺言には、『長男に全ての財産を相続させる。』との内容が記載されていました。

更に後日、日付を異にし、遺言内容も全く異なる別の遺言が発見されました。

その遺言には、『長女に全ての財産を相続させる。』との内容が記載されていました。

その遺言には、震えるような手で書いたと推測される、ミミズが走ったような文字で記載がなされていました。

両遺言の作成日付は、長女へ相続させるとした遺言が2016年8月1日付、長男へ相続させるとした遺言が2016年8月16日付。

民法では、二つ以上の遺言の内容が異なる場合、発見した日付ではなく、作成された日付が後の遺言の方が形式的に有効となります

したがって、上記事案においては、2016年8月16日付の長男へ相続させるとした遺言が形式的に有効となります。

しかし、後に発見された長女へ全て相続させる旨の遺言と、先に発見された長男へ相続させる旨の遺言を見比べると、明らかに字体が違うのです。

 

遺された2通の遺言書

遺言者は、死亡直前に末期の肝臓がんに侵され闘病生活を行い、生死を彷徨うような状況であった為、当然、長男へ相続させるとした遺言は、遺言者が本当に自署したか疑義が残ります。

この点に付き、法務局での遺言を利用した不動産の名義変更・金融機関の預貯金解約等は、形式的に審査を進めますので、上記事案について長女への遺言が有効で長男への遺言が無効であるとの実質的判断は一切されません。

司法書士の立場からしても、個々のご家庭の状況や歴史を判断することが困難な為、形式的に判断をせざるを得ないのが現状です。

しかしながら、明らかに不自然な上記事案につき、依頼者である長女に弁護士を紹介し、遺言無効確認訴訟を提起した結果、訴訟の継続中に長男が遺言を偽造したことを自白し、長男へ相続させるとした遺言は無効となりました。

遺言を偽造した者は、民法上相続欠格者(相続する権利をはく奪された人)として扱われる為、当該長男は相続人でないものとみなし、無事長女へ相続させる手続きを終了させました。

 

遺言は、公正証書遺言・自筆証書遺言に関わらず同等の効力があります。

そして、二つ以上の遺言がある場合でその遺言内容が異なる場合は、後の日付の遺言が有効として扱われます

実際の手続きにおいては、字体等の実質的な部分に触れず審理が進められる為、今回取り上げた事例のように疑義が生じる場合は、遺言無効確認訴訟等も検討してみても良いかもしれません。

 

 

お気軽にご相談ください。

遺言の種類と書き方~公正証書編~ (2020.04.30)

遺言の種類と書き方②

 

 

≪目次≫
1.自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
2.自筆証書遺言は検認が必要
3.公正証書遺言の効果
4.公正証書遺言作成時の注意点

 

1.自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

前回のトピックスで自筆証書遺言について触れましたが、今回は公正証書遺言の作成方法等について触れてみたいと思います。

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】はこちら

司法書士や弁護士等が、遺言の相談をされた場合、まず提案するのが公正証書遺言の作成と言っても過言ではないでしょう。

数ある遺言書の中で、なぜ司法書士や弁護士は公正証書遺言を薦めるのでしょう?

それは、遺言者や遺言者のご相続人に、それほどのメリットがあるからなのです。

公正証書遺言との対比をするため、自筆証書遺言のデメリットを各種取り上げてみましょう。

 

2.自筆証書遺言は検認が必要

まず自筆証書遺言を書く場合、

全文自署・日付・氏名・押印が無い以上、無効との判断が下される可能性があり、実際、無効と判断された遺言は過去に数多く存在します

また、前記の有効要件をクリアしても、

不動産の表記が住所で特定されている(法務局の名義変更手続きは、地番・家屋番号と言った住所とは違う特定方法が必要)等、法務局の手続き上不備があり、有効だけれど手続き上受理されないといったケースは多々あります。

更に面倒なのは、

自筆証書遺言は、遺言者の死亡後、遺言を発見した相続人又は遺言の保管者において、遅滞なく遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ『遺言の検認』という手続きを経なければなりません

この『遺言の検認』手続きを行い、検認調書を遺言に合綴してもらった後でなければ、正式な手続きに使っていく事が出来ないのです。

もちろん、遺言の効力は(有効・無効は別として)、遺言者の死亡を機に発生していると言えるのですが、不動産の名義変更・預貯金等金融資産の相続手続きには、検認が終了していなければ、実務上受理されない扱いとなるのです

 

3.公正証書遺言の効果

前置きが長くなりましたが、公正証書遺言の場合、上記の①~③のようなリスクや手続きは一切必要がありません。

公正証書遺言は、遺言者が遺言の内容・趣旨を公証人(公証役場所属の公務員であり、裁判官OB・検察官OBが大多数を占める)に告げ、公証人に遺言を作成してもらい、出来上がった遺言を公証人が遺言者に読み聞かせることによって作成が完了していきます

前述の公証人とは、司法試験を突破しているれっきとした国公認の法律家であり、公証人の所属する公証役場とは、言うなればミニ裁判所を指します。

各種の法律的な書面(遺言・売買契約書・賃貸借契約書・金銭消費貸借契約書・和解契約書・離婚協議書等)を公証役場で、公証人関与のもと作成することによって、その書面は公文書となり、有効性・証明力は100%に近いものとなります

前記①②のような有効要件の可・不可や表記ミス等は原則防止出来ますし、何しろ証明力が高く、公正証書遺言が公証役場にて半永久的に保存されることを鑑みて、前記③のような検認手続きは一切不要となります。

このような、各種メリットを考えると司法書士等の専門家は、遺言作成の相談を受けた場合、公正証書遺言作成をお薦めしているのです。

 

4.公正証書遺言作成時の注意点

では、公正証書遺言作成の流れですが、前述したとおり、作成してくれるのは公証人ですが、遺言の内容・趣旨を考案するのは、遺言者本人であり、この点については公証人は具体的アドバイス・提案をすることはまずありません。

綿密に考えて、遺言の内容・趣旨を伝えないと、ご希望通りの遺言が作れない場合があります。

この遺言の内容・趣旨を正確に伝えることが、簡単そうに見えて意外と難しいのです。

特定の相続人一人に、遺産のすべてを相続させる旨の遺言を書く場合、必ず他の相続人の遺留分(法的に認められた最低限の相続分)を侵害し、後々トラブルを招く恐れがあり、遺言の趣旨を実現できない場合があります

また、遺言者より遺産を相続する相続人が先に死亡する場合もあり、その場合、当該相続人へ相続させる旨の遺言は無効となります。

これは、遺言で、遺産の取得を指定された相続人(法律上、受遺者と呼んでいきます。)に子供がいる場合でも、特別な文言が記載されていない限り(予備的遺言と呼びます。)同様の結果となります。

 

 


こういった事態を防ぐため、相続を専門とする司法書士が所属する当法人では、公正証書遺言作成の際、遺言者と公証人の間に入って、遺留分請求に対抗する提案や遺留分を侵害しない遺言内容の提案、遺言者より受遺者が先に亡くなった場合を想定して、予備的遺言の提案をする等、遺言が無効にならないよう、様々な工夫・提案をしていきます。

費用については、遺言作成に必要な戸籍・評価証明書等取得の為の実費、司法書士報酬・公証人報酬が発生しますが、費用をかけて作成していく価値は充分にあると言えるでしょう。

遺言を書こうとご検討されている方は、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、まずお気軽にご相談ください。

 

 

お気軽にご相談ください。

遺言の種類と書き方~自筆証書編~ (2020.04.28)

遺言の種類と書き方①

 

 

わが国の遺言の種類・方式は、民法に数多く規定されておりますが、感染症で隔離施設に隔離されたり、船舶事故等で緊急に船舶内で遺言を書いたりする場合を除き、通常の場合ですと下記の3種類の遺言の方式から選択することが一般的です。

≪3種類の遺言の方式≫
●自筆証書遺言
●公正証書遺言
秘密証書遺言

上記のうち③の秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも公開せずに秘密にしたまま、公証人に遺言の存在のみを証明してもらう遺言のことであり、通常この方式を選択される方は、ほぼいらっしゃいません。

では、実務で司法書士が良く目にする①の自筆証書遺言、また、司法書士がよくお客様に相続対策で提案する②の公正証書遺言の方式・書き方について触れてみたいと思います。

公正証書遺言についてのトピックスはこちら
【遺言の種類と書き方~公正証書編~】

 

 

1.自筆証書遺言の有効要件・書き方

自筆証書遺言は、下記の要件がすべて満たされていなければ、問答無用で無効となりますので、事前に司法書士等の専門家にご相談しておく事をお薦めします。

●全文を自署
●日付の記載をいれる
●氏名の記載
●押印があること

※上記のうち、全文を自署する要件のみ、2019年1月13日から施行された改正民法により方式が緩和され、遺言の目的とする財産の記載については、登記簿謄本の写しや通帳の写しを添付(各写しのページ毎に氏名と押印が必要)することで、自署の代わりとすることが可能となりました。

上記要件は、あくまで遺言書としての有効要件であり、要件を満たしていることで遺言者の死後の不動産の名義変更や預貯金の解約等の諸手続きに確実に対応出来るか否か、については全く別問題となりますので、手続きを見据えた書き方というものが、非常に重要となります。

また、公正証書遺言を除き遺言は遺言者の死亡後に家庭裁判所による検認手続き(改ざん等を防ぐ証拠保全手続き)が必要となりますので、どうしても費用をかけずに自力で書きたいという方を除いては、公正証書による遺言作成の方が効果が絶大と言えるでしょう。

 

それでは、自筆証書遺言の実際の書き方について見ていきますが、

書き方はシンプルに、誰に何を渡したいかを記載していればそれで充分です。例を挙げると、

『遺言者は下記財産を妻●●に『相続させる』。●●銀行●●支店 普通預金 口座番号 ●●●●●●● 残高全額
所在 新宿区●●
地番 ●●番
地目 ●●
地積 ●●㎡     ...』

と言った具合です。

当たり前の様に感じるかもしれませんが、ここで注目すべきワードは相続させるとの文言です

多くの遺言には妻●●に『あげる』『与える』『贈与する』『譲る』との文言が書かれていることが少なくありません。

また、『遺贈する』との難しい表現をされているケースも多々あります。

実は上記の様な文言、相続手続きをする司法書士を非常に悩ませる文言なのです。

上記の、『遺贈する』はもちろんのこと、『あげる』『与える』『贈与する』『譲る』との文言は、不動産の名義変更や預貯金の解約をする場合に、法的に遺贈と解される余地があり、実際に相続手続きをする際、遺言とは全く関係の無い相続人に協力を求めなければいけない場合が出てくるのです

実際は、遺言者の置かれていた当時の状況・遺言全文から読み取れる遺言者の合理的な意思を推認・解釈して、手続きの手法を検討することになります。

 

2.『相続』と『遺贈』の違い

では、遺贈と相続との違い、どのような意味が含まれているのか?

民法の考え方では、「遺贈とは、遺言により自己の財産を『相続人でない他人』に与える『処分行為』である。」と解釈されています

ここで一旦、遺言から離れて考えてみましょう。

例えば、ご自身のお父様が、生前中にある物を他人にあげるなどの処分行為をしたまま、その履行をせずに死亡した場合、お父様がなされた生前の処分行為の履行義務は相続人全員に引き継がれます。

その結果、相続人全員の協力のもと、相手方に物の引き渡しをしなければならないという事態を招くのです。

遺贈も、自己の財産を『相続人でない他人』に与える『処分行為』と解されているので、上記の例と何ら変わりがなく、遺言の効力が発生した瞬間(すなわち遺言者の死亡の時)に、その財産の移転義務が相続人全員に承継されます

したがってこの場合、遺言の内容を実現する為には原則、相続人全員の協力が必要となるのです

遺言は実務上、遺言者が死亡したあとに、相続人の内の一人から判が貰えなさそうと言った、何らかの理由で作られるケースが多くみられます。

せっかく妻に一切の財産を与えたくて書いた遺言に、『遺贈』との文言が使われたが為に、不仲の長男の実印・印鑑証明書を要する事態になったのでは元も子もありません。

相続人の一人に対し、『相続させる』との文言を使って遺言を書いた場合は、基本的には、上記の様な事態には陥りません

 


法的な効果や、実際の手続きに対応出来るかは、相続に精通した司法書士にしか判断できないものです。

遺言を書こうと思った時、また、自筆証書遺言で相続手続きをしようと思った際、当法人にご相談頂ければ、専門の司法書士が全面的にバックアップをさせていただきます。

万が一、ご自身のお父様等が『遺贈する』との文言を用いて自筆証書遺言を書かれていた場合でも、あきらめる必要はありません。

当該遺言が、相続人の1人への遺贈である場合、当法人の司法書士が、関係各所に交渉・折衝をし、遺贈手続きの簡便な方法を提案したり、場合によっては一般的な相続手続きに転換して手続きを行った事案が過去に多数存在します。

まずは目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お早目のご相談をされることをおすすめ致します。

 

お気軽にご相談ください。

「配偶者居住権」の施行とその効果 (2020.04.27)

配偶者居住権の施行とその効果

 

 

 

≪目次≫
1.配偶者居住権ってどんなもの??
2.配偶者居住権の種類
3.配偶者居住権の要件と範囲
4.メリット・デメリットとは??

民法の大改正において、相続法に関して新たに「配偶者居住権」が新設されました。

令和2年4月1日よりいよいよ施行となりましたが、ここで改めてどんな内容なのか、どんな効果があるのか、などを掘り下げてみましょう。

 

1.配偶者居住権ってどんなもの??

配偶者居住権とは・・・『残された配偶者が被相続人の所有する建物(夫婦で共有する建物でも可)に居住していた場合、一定の要件を充たすときに、被相続人が亡くなった後も、配偶者が賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利』です。

具体例で見てみましょう。

≪事例≫
Aさんはつい先日、夫に先立たれてしまった。別居している子供がおり、相続財産は自宅と預貯金だけであった。
古家ではあるが、立地は戦前から所有している好立地であるため、相続税が発生してしまうようだ。

まず、配偶者であるAさんが自宅を相続すると、法定相続分通りに相続財産を分配するとなった場合、子供に自宅以外の財産である預貯金が渡る可能性が高いため、Aさんは、家はあっても貰える預貯金が大きく減ってしまう事になります

分配財産がなんとか預貯金から賄えたとしても、相続税の支払いが必要となるため、払い切れないとなれば、自宅を売って支払わなくてはならないでしょう。

延納、物納といった方法もありますが、いずれの場合も、遺されたAさんは今後の生活資金が不足したり、住み慣れた家を手放す事態にもなりかねません

このような場合の配偶者の居住権を保護する目的で、配偶者居住権が新設されました

これは、不動産の所有権を、配偶者が死亡するまで住み続けられる『配偶者居住権と、子供など、他の相続人が居住権以外の所有権だけを持つ『負担付き所有権』との二つの権利に分ける制度です

 

2.配偶者居住権の種類

前述の事例では、他の相続人である子供と協議し、折り合いがつけば問題なく配偶者居住権を設定できそうでしたが、中には、家は他の相続人が相続し、残された配偶者が直ちに住居を退去しなければならない、といったケースもあるでしょう。

これは、残された配偶者にとっては大きな負担となると考えられます。

そこで、夫婦の一方の死亡後、残された配偶者が最低でも6か月間、無償で住み慣れた住居に住み続けられるようになりました

これを配偶者短期居住権と呼び、下記のように区別されています。

配偶者居住権・・・・配偶者が死亡するまで(10年、20年と限定することもできる)建物に居住できる権利(要件あり

配偶者短期居住権・・一定期間少なくとも6ヶ月間)建物に居住できる権利(要件無し
※配偶者短期居住権に関して、新法の施行日以後は無条件でこの効果が発生します。

 

3.配偶者居住権の要件と範囲

配偶者居住権の設定にはいくつかの要件があります。

●相続が発生した時点において、配偶者がその建物に居住していること

●遺言で配偶者に配偶者居住権を遺贈する旨を記載している、または、遺言がない場合は相続人間の遺産分割協議において配偶者居住権を取得する旨を遺産分割協議書に記載していること

●配偶者居住権設定の登記がなされていること(配偶者と建物所有者による共同申請)

上記の要件を充たすことが必要となります。

 

4.メリット・デメリットとは??

メリットとしては次の2点が挙げられます。

●賃料なく居住できる

当然ながら、一番のメリットとしては、配偶者が賃料等の支払なくそのまま慣れ親しんだ建物に住み続けられる、という点です。

更には、建物所有者の承諾を得れば、第三者に居住建物の使用又は収益をさせることもできますので、例えば、使用しなくなった建物を第三者に賃貸することで賃料収入を得て、介護施設に入るための資金を確保することもできます。

 

●配偶者が相続財産をより多く取得できる

夫婦に相続が発生すると、配偶者が不動産を相続するケースが多いですが、配偶者居住権を設定する事で、建物の所有権を取得するよりも低い価額で居住権の確保が出来ます

これにより、預貯金等のその他の遺産をより多く取得することが出来ます

 

【例 2,000万円の評価額の建物と3,000万円の預貯金を妻と子供1人で遺産分割する場合】
(法定相続分での分割と仮定します。また、配偶者居住権の価値算定についても仮定での評価額となります。)

妻が建物の所有権を得る場合…

建物(2000万)+預貯金(500万)となり、預貯金も分配こそされますが、今後の生活を考えると少し不安が生じてくる金額です。

配偶者居住権を設定した場合…

配偶者居住権(1000万)+預貯金(1500万)となり、今後の生活にも余裕を持てる金額でしょう。

婚姻期間20年以上の夫婦間における居住用不動産贈与に関する優遇措置が適用となる場合、生前贈与した居住用不動産については相続財産には含まれないため(2019年7月1日より施行)、配偶者居住権を設定しても、原則として遺産分割で配偶者の取り分が減らされることはありません

 

このように配偶者にとって非常に手厚い今回の法改正ですが、注意すべき点もあります。

●2020年4月1日以後の遺言書でないと効力がない。
●配偶者居住権設定の登記の際に、配偶者と所有者での共同申請となる。

配偶者居住権は施行日の2020年4月1日よりその効力が認められますので、これより前に書かれた遺言書を用いて配偶者居住権の設定する事はできません

また、配偶者居住権の設定された不動産は売買対象としてはかなり不利となる(配偶者が住んでいるため、仮に購入しても済むことが出来ない・賃貸に出せない)ため、所有者となる者としっかりと話し合う必要があるでしょう

なお、建物の取り扱いとしては賃貸しているのと同様に、配偶者が使用・修繕の義務を負う他、居住している建物やその敷地の固定資産税等を負担する事になります。

 


このようにまだまだ始まったばかりの配偶者居住権ですがだいたいのイメージは掴めましたでしょうか??外せないポイントとしては、

◎配偶者居住権の設定には登記が不可欠である!
◎スムーズな配偶者居住権の設定には遺言書を書いておくことがベター!

の2点が挙げられます。

これらをふまえ、新制度の利用を検討されている方は、目黒区学芸大学、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで一度ご相談ください。

 

 

お気軽にご相談ください。

相続手続きと銀行実務の実態 (2020.04.13)

相続手続きと銀行実務の実態

 

 

 

≪目次≫
1.相続人が関わる可能性が最も高い手続き
2.銀行の解約手続の実態
3.専門家に依頼するメリット
4.遺言書がある場合の銀行実務

 

1.相続人が関わる可能性が最も高い手続き

ご家族にご相続が発生すると、亡くなった方の遺産全体を把握して、様々なお手続きをしていかなければなりません。

その中で、ほぼ確実に発生する手続きが銀行預金の解約手続きです。

当法人の数々の経験則から、故人様の中で、預貯金を全くお持ちでない方は、ほぼいらっしゃらないかと思います。

特に、ご高齢の方であれば、ゆうちょ銀行にお金を預ける又は年金の振込先指定口座としているケースが多々見受けられます。

ご本人が預金口座の解約を取引銀行に申し入れる場合、手続きは簡単で、申込書にサインと届出印を押印するぐらいで手続きは進みます。

ところが、相続となるとそうはいきません!

銀行から求められる書類が膨大なのです。

 

2.銀行の解約手続の実態

 

・相続人全員の実印
・印鑑証明書(有効期限あり)
・故人の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍・除籍・改製原戸籍)
・相続届(銀行所定の用紙で書き方の確認を銀行と折衝する必要があります)

解約手続には、上記に挙げたような書類を事前に用意する必要となります。

ようやく、手続き書類を入手して銀行窓口に行くと、、、、順番待ちで、30分は待たされます。

更に自分の手続きの順番となっても、書類を受け取った担当の行員さんは、、、『上席と確認を取って参ります。』とバックヤードに入り、なかなか帰って来ません。

30分経過後、行員さんが戻ってきて、『後ほど相続専門部署から連絡が入る場合がございます。』と一言。

その後、相続専門部署から電話があり、『戸籍が〇通足りてないので提出してください。』等と言われるケースは多々あります。

銀行の窓口対応は、9:00~15:00まで、お仕事をされている方は、忌引き休暇・有給休暇を駆使して手続きしなければなりません。

さてさて、ここまで読んで頂いただけでも一筋縄ではいかない手続きだとご認識頂けたのではないでしょうか。

 

3.専門家に依頼するメリット

そんなご面倒なお手続きですが、ご遺族の負担を少しでも減らすべく、当法人は遺産整理業務(預金等解約業務)を積極的に提案し、受任しています

預金解約業務は、頑張ればご自身でも出来ますが、その費用対効果等を鑑みると、専門家に依頼する方がはるかに楽な場合が多くあります。

実際、最初はご自身で始めたお手続きでも、あまりに修正・再提出が重なり、疲労困憊で当法人にご依頼頂いたケースや、相続・遺産整理業務を熟知している当法人が銀行とご遺族との間に入った事で、順調に解約手続きが終了したケースは数えきれない程ございます。

また、司法書士等の専門家が代理人として手続きすることで、銀行の対応も一変します

これは実はよくある話なのですが、銀行内での手続きの都合上提出すべきとされている書類でも、法的根拠に則って考えると実は不要だった、といったケースがあります。

こういったケースへの対応も、相続に詳しくないご遺族の場合、そのまま言われたとおりに対応せざるを得ませんが、専門家が法的根拠を示したことで、現状の提出書類だけでOKとなり、その後の対応がスムーズになる、と言った実例があります。

 

4.遺言書がある場合の銀行実務

次に、遺言書がある場合の銀行実務を取り上げてみたいと思います。

自筆証書遺言(手書きで書いた遺言)がある場合、家庭裁判所で検認手続きをしさえすれば、法律上、公正証書に匹敵する効力を持ちます

しかし自筆証書遺言には下記のような厳格な要件があり、

●全文自書
●日付の記載
●氏名の記載
●押印

ひとつでも要件を欠いていると、せっかく書いた遺言書ですが法的に無効となってしまいます。
※民法改正により、2019年1月13日より一部緩和され、財産目録部分についてはPCで作成したものや通帳のコピーでも可能となっております。

また、預金債権の特定を誤ったり、文言を間違えてしまうと、せっかく書いた遺言を使っても手続きが出来なくなってしまうケースが多く見受けられます

下記に、過去に手続きに使えなかった記載例を掲げます。

 

・〇〇銀行は妻●●に任せる
(任せるは、管理なのか相続取得させるのか意図が不明瞭で手続きが出来ません。)

・遺言内容をレコーダー等に録音している。
(電子機器は容易に改ざんされる可能性がある為、遺言として認められません。)

押印がない

ワードで本文を記載し、氏名と押印のみがある。

 

上記の様な事例では、遺言を利用しての手続きが一切出来なくなる可能性がありますので、一度司法書士等の専門家に見てもらったほうが有用でしょう。

上記の要件をクリアして、ようやく遺言を利用しての手続きに進んだ際、多くの銀行担当者に言われるのが、下記の事項です。

 

①『当行では、公正証書による遺言しか受け付けしません。』

②『遺言に加え、相続人様全員の実印と印鑑証明書を取り付けてください。』

③『遺言執行者を立ててもらえないと受付できません。』

 

①と②は、非常に頻繁に言われることなのですが、そもそも遺言を書く大抵の方が、

◆判を貰えそうにない相続人がいる。
◆前妻との間にお子さんがいる。
◆行方不明の相続人がいる。

などの事情を踏まえて書いているケースが多く見受けられます。

そのため、上記②のように、相続人全員の実印・印鑑証明書を取り付けるとなると、そもそも遺言者が遺言を書いた意味がなくなってしまいます

当法人ではこのような場合、法人として遺産整理受任者となり、法律知識を駆使して銀行に粘り強く交渉をしていきます。

また、③のようなご指摘を受けた場合、家庭裁判所に当法人を遺言執行者とする申立を行い迅速に手続きを進めて参ります

 

 


いかがでしたでしょうか。

銀行により必要な書類等は千差万別ですし、遺言のある場合の手続きとなりますと、対応もかなり変わって来ます。

当法人では、豊富な相続に関する知識と登記手続き、解約手続きのみならず相続税などの周辺知識にも明るい司法書士が、専門チームにてご対応致します。

まずはお気軽に、渋谷区マークシティ、目黒区学芸大学駅の司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズにご相談ください。

 

 

お気軽にご相談ください。

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