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法定後見制度の注意点 (2021.07.29)

 

≪目次≫
1.後見人候補者が必ず就任できるとは限らない
2.申し立ての準備から就任まで時間がかかる
3.本人と口約束でした契約や贈与は、履行が果たされない場合がある
4.後見申立の取り下げには許可必要
5.被後見人が意思能力を回復するか死亡するまで継続する
6.後見人が就任した後に、後見人を交代させるには条件がある
7.後見が終了しても管理していた財産は後見人のものになるわけではない
8.後見人であったからといって相続時に有利になるわけではない
9.後見人になったとしても本人の行為すべてを代理で出来るわけではない

 

ご家族が認知症になった等をきっかけに、成年後見制度を利用したいとのご相談が近年さらに増えてきていると思います。

関連するトピックスはこちら→

【そもそも成年後見制度とは何か?制度の概要と後見人の義務とは】

【成年後見制度の申し立てのために家庭裁判所に提出する書類】

 

また、家庭裁判所のホームページでは後見センターの専門ページもあり、ニーズの高さが伺えます。

(外部サイト⇒【家庭裁判所後見センター 手続きの流れ・概要】

しかしながら、制度自体は聞いたことがあるけれど、内容は良く分からないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、制度利用開始に際して良くご質問されること、誤解されている方が多いと思われる点についてご紹介していきたいと思います。

1.後見人候補者が必ず就任できるとは限らない

 

成年後見の申し立てを行う場合、具体的に候補者を決めて申し立てることができます。

例えば、夫を亡くした妻が、認知症になってしまい、夫婦の実の息子を後見人候補者として申し立てを行うとします。

ところが、裁判所は候補者が立てられたからといって、必ず候補者を後見人に就任させなければならないわけではありません

具体的には、被後見人の心身の状態や生活財産の状況から、

●後見人に就任した時に本人の権利擁護、財産保護を行うことができるのか
●後見人候補者の生活状況や職業から後見人として問題ないか
●本人と後見人候補者との間に利害対立が生じていないか
●本人が、候補者が就任する事に関してどのような意見を持っているか

などの項目を総合的に考慮し、誰を後見人とするかを決定していきます。

 

場合によっては第三者である司法書士や弁護士が後見人に選任されたり、候補者が後見人に選任されたうえで、司法書士や弁護士が後見監督人(後見人を監督する者)として選任されたりすることもあります

また、誰が選任されるかという点については、裁判所に対して不服申し立てができません

しかも、後見の申し立て書類を提出した後は、裁判所の許可が無ければ申し立てを取り下げることができなくなります

 

後見人として第三者が入ってくるのは絶対に避けたいとお考えの方は、是非認知症になる前に、自身の意思で後見人を選定できる、任意後見人の制度をご利用されることをお勧め致します

任意後見制度について詳しくは別のトピックスにてご紹介致します。

 

2.申し立ての準備から就任まで時間がかかる

 

例えば、実家に一人暮らしの母親が認知症になってしまったが、まだ程度がそこまで重くない為、そのうち手続きをすればよいと考えていたとします。

ある時を境に急に症状が悪化し、家に一人にしておくのは心配と考え、父親から相続した母親名義の実家を売却し、その資金を基に施設に入居させたいと考えたとしても、すぐには手続きが進みません。

まず実家の売却や施設に入所する手続きのためには、成年後見人の申し立てを行っていかなければなりませんが、

①申し立て準備に1、2ヶ月
②裁判所の精神鑑定や調査で2、3ヶ月
③さらに審判が降りた後2週間の期間経過後に審判が確定
④後見人として登記事項証明書が取得できるまでには更に1、2週間程度

ケースによりますが、上記のように合計4ヶ月から6ヶ月程度、時間を要してしまいます。

また、手続きを進めようと考えた時に、本人や親族から反対の声が上がったために、説得に時間を要することも考えられます。

認知症等により判断能力が低下している場合には、できるときに手続きをすることが望ましいと思います。

 

3.本人と口約束でした契約や贈与は、履行が果たされない場合がある

 

後見人が就任する前の契約等によって、将来、贈与等を約束していた場合でも、約束通りに履行されるとは限りません

例えば、母親が認知症を発症したが、相談者である息子は遠方に居住していたために、第三者である弁護士が後見人に就任したとします。

母親は息子である相談者のために、認知症が発症する前から、自身の財産の一部を贈与すると約束していたとしても、財産管理をする後見人がこれに応じてくれるとは限りません。

そもそも成年後見制度は、申立人等の親族のためのものではなく、あくまで被後見人のための制度です。

本人の財産を保護するのが制度の目的になりますので、認知症が生じる前で、かつ書面等によりその意思が明確に確認できる場合でなければ、贈与のように一方的に被後見人の財産を減少させる行為には応じない可能性が高いと思います

但し、どんな贈与も認められないわけではありません。

母親からすると、息子に対しては扶養義務があります。(民法877条)

この扶養義務履行の為に毎月生活費を支払う行為は、通常の範囲内であれば問題無いといえる可能性があります。

このような場合には、第三者である後見人は、裁判所と相談をし、この贈与や契約に応じるかを判断していく事になります。

後見制度を利用するか否かに関わらず、大事なことは契約書等の書面を作成しておくと、このようなときにも有効です。

 

4.後見申立の取り下げには許可必要

 

成年後見申立のための書類の準備が整い、申立書及び提出書類を裁判所に提出すると、正式に申立がなされたことになります。

そして一度申立がなされた後は、審判前であったとしても、家庭裁判所の許可を得なければ申立を取り下げることはできません

これは、成年後見制度がそもそも本人(被後見人予定者)保護のための制度であるため、申立人の判断のみで終了させることが適切でないと考えられるからです

例えば、本人Aさん(被後見人予定者)の息子Bさんが申立人となり、後見人候補者をBさんとして申立書を提出したとします。

手続きが進むにつれて、家庭裁判所の調査官の言動から、Bさんではなく専門職の弁護士が選任されそう、あるいは後見人にはBさんが選任されそうだけれども、後見監督人として弁護士が選任されそうと感じたとしても、家庭裁判所の許可なく取り下げることはできません。

また、第三者が選任されそうとの理由のみでは、許可も下りない可能性が高いと思われます。

申立書類は、申立以後取り下げられなくなることを念頭に、提出する必要があります。

審判を出すか出さないか、あるいは誰を後見人として選任するかは、個々の事情から最終的には家庭裁判所の裁判官が判断をするため、確定的なことは申し上げられません。

しかし財産の多寡親族の関係性申立てをして成年後見人をつける目的等により、家庭裁判所がいかなる判断をしうるかとの見通しをある程度立てることは可能ですので、申し立てを行う際はご相談いただければと思います。

 

5.被後見人が意思能力を回復するか死亡するまで継続する

 

成年後見の申立のご相談をお受けする場合、大多数の場合、申し立てる目的があります。

 

Aさんは父親が10年前に亡くなり、その際に父親が所有していたAさんの実家を、母親が相続し、母親がそこで一人暮らしをしています。

ところが母親が認知症になってしまったため、母親をグループホームに入れる資金に充てるために、実家の売却目的で後見申立をしたいというケース

 

この場合、無事申立が認められ後見人としてAさんが就任し、実家の売却手続きを完了させたとしても後見人でなくなるわけではありません

後見は、被後見人である母親が亡くなるか、あるいは認知症が治癒(判断能力が回復)するまで続きます

後見人を立てないとできないからと、何らかの手続きのために一時的に成年後見を利用するということはできません

これも、本人を保護する制度である以上、申立人が考える目的を果たしたとしても、本人の要保護性が消滅するわけではないからです

なお後見人は、病気などやむを得ない事情がある場合には、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます。

この場合にも、後見自体が終了するのではなく、別の後見人を就任させ、新後見人に引き継がれることになります。

基本的にはご本人が亡くなるまで一生続くことですので、特に親族が候補者になる場合には、よく検討して申立手続きをする必要があります。

 

6.後見人が就任した後に、後見人を交代させるには条件がある

 

例えば母親Aのために息子Bが申立人となって後見申立を行い、弁護士や司法書士等の専門職の後見人Cが選任されたとします。

Bは後見人が就任したことで一安心したのも束の間、Cとはなかなか連絡がつかないうえ、愛想が悪くてうまくコミュニケーションが取れません。

Bは、Cとそりが合わないため、交代させたいと考えるようになりました。

この場合、仮にBがC後見人を交代させたいと考えたとしても、家庭裁判所に申し立てて無条件に交代させることはできません

このように後見人を交代させたい場合には、本人や親族が後見人の解任請求を行っていくことになりますが、これが認められるためには、後見人が任務に適しない正当な事由がなければなりません

例えば後見人が本人に対して虐待行為を行っている、あるいは財産を本人のためでなく後見人自身のために使っている(横領している)、等の事由が必要になります。

成年後見制度はあくまで本人のための制度であるため、親族が望んだとしても本人の不利益になっていないのであれば交代すべきではない、と考えられるからです。

 

7.後見が終了しても管理していた財産は後見人のものになるわけではない

 

例を挙げてみましょう。

被後見人A(夫は既に他界している)の長男Bが、Aの後見人に就任し、預貯金の一切をBに渡し、日常的に必要な金銭をAの預金から支払っていたとします。

Aはしばらくして病気により死亡しました。Bには、弟のC(Aの子)がいます。

この場合、被後見人死亡により、後見は終了します。しかし、既に預かっているAの預貯金はBのものになるわけではなく、相続財産としてBとCが相続することになります。

BがCから相続権を主張された場合、法定相続分(Aの財産の半分)については渡さなければなりません

後見申立の相談を受けていると、「後見人になった者が財産をもらえる」と考えている方がいらっしゃいます。

しかし被後見人の財産は、後見人が被後見人のために預かっているに過ぎず、被後見人死亡による後見終了後は、全て「相続財産」として相続人に引き渡されることになります

8.後見人であったからといって相続時に有利になるわけではない

 

被後見人に相続が発生した場合、相続人が財産を取得する旨は上記7で述べた通りですが、後見人が相続の際に有利になるとは言えません

後見人であった者の相続権が、他の相続人より多いとの規定はないからです。

また例えば上記7の例で、後見申立の際に、「Aと同居しているBが後見人となり、Aの面倒を見る代わりにCは相続を放棄する。」との念書をCに書いてもらったとします。

しかし、被後見人の生前に相続放棄の念書を書いたとしても、これには何ら法的拘束力はありません

これは民法915条に、相続放棄をする場合には「相続があったことを知った時から3か月以内」に行う旨が明記されておりますので、あくまで「死亡後」に手続きをすることが前提となっており、被相続人が死亡する前に相続放棄することはできないからです

それどころか、Cから「後見人としての管理が悪かったから、相続財産を無駄にした」と不当な因縁をつけられてしまうこともあるようです。

家庭裁判所に求められるか否かにかかわらず、後見終了時に争いにならないように、後見人として被後見人の財産を使った場合には、全て領収書等を保管しておくことが望ましいと思います。

9.後見人になったとしても本人の行為すべてを代理で出来るわけではない

 

後見人は、被後見人の財産を管理し、財産に関する法律行為についてのみ、被後見人の代理行為ができます

言い換えれば、一身専属行為は代理することはできません

一身専属行為とは、一身に属するという文字のごとく、いかなる場合も他人には行えない、本人のみに行える行為ということです。

例えば、結婚や離婚等の行為や、養子縁組、認知等が挙げられます。

これらの行為は、いかに後見人であろうとも、本人が決定すべき事柄であり、後見人が口を出すことを認めるべきではないからです

また、「遺言」も一身専属行為とされているため、後見人が代理で行うことはできません。

ご相談を受ける中で、母が認知症になってしまい、母亡き後の財産の処分方法について法定相続に従うと不都合があるため、自分が後見人となって遺言を書きたいとおっしゃる方がいらっしゃいますが、これはできません。

被後見人となった後も遺言を書くことはできますが、判断能力が一時的に回復していて、医師2人以上の立会のもと事理弁識能力のあることを確認できた場合にのみ行うことができます

遺言等の生前対策は、認知症が心配になる前の元気なうちに行っておきたいですね。

 

当法人では、後見制度の注意点等も踏まえ、最適な制度の利用方法のご提案をさせていただきます。

少しでもご不安な点ございましたら、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、まずは一度ご相談ください。

 

 

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