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法定後見の3つのレベルについて (2021.07.27)

 

 

 

≪目次≫
1.なぜ3つのレベルが用意されているのか
2.成年後見について
2-1.成年後見人に認められた権利
3.保佐について

1.なぜ3つのレベルが用意されているのか

法定後見制度とは、認知症等により判断能力が低下してしまった方が生活するうえで困らないために、代わりに財産の管理や契約行為をする人=「後見人」を、家庭裁判所を通して選任してもらう制度です。

この制度の趣旨は「本人の自己決定を尊重」したうえで、日常生活に困難が生じないように保護することにあります。

しかし、一概に「判断能力の低下」といっても、その程度や質は人それぞれ異なります。

軽い物忘れから自分の財産がわからなくなり、管理が難しいだけの比較的軽度の方から、すでに言葉を理解して返事をすることすら難しい場合まで、様々な方がいらっしゃいます。

そのような方をすべて一律・同列に規定していくことは、本来の後見制度の趣旨から外れてしまうと言えるでしょう。

例えば、軽い物忘れ程度の方に対して、高齢者施設の選別・入所契約、アパートの賃貸借契約等、比較的自己決定が尊重されてしかるべき場面においても、全ての契約ごとについて本人は行えず、後見人が代理で契約しなければならないとなったらどうでしょうか。

後見人と本人で意見が相違した場合、後見人が本人保護のためと称して代理で契約しなければならないとすれば、かえって自己決定を侵害しているとすら言えます

また逆に、重度の脳機能障害の方で意思表示もできない方に対し、高齢者施設の選別・入所契約、アパートの賃貸借契約はご自身で行ってください、との制度にしてしまえば、実質不可能ですので、今度は本人保護が不十分ということになってしまいます

このようなことが無いように、民法では成年後見制度に「成年後見」「保佐」「補助」と、3つのレベルを作っているのです。

 

2.成年後見について

法律上、成年後見となる方は、「精神上の障害(認知的障害・精神障害等)により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者」とされてます。

つまり、判断能力がほぼ無い状態で、財産管理や生活の組み立てが一人では困難な場合といえます

後見申立され、本人の状態について家庭裁判所の判断がこのような場合には、「成年後見」が選択されます。

なお、家庭裁判所は医者では無いので直接面談等で本人の状態について判断するということではなく、申立の際に提出する医師の「診断書」に基づいて、家庭裁判所が総合的に判断することになります。

診断書によって判断がつかない場合には、更に家庭裁判所選任の医師による、鑑定が行われ、より詳細に本人の状態を診ていくことになります。

成年後見の申立に関しては、本人の同意は不要です。

これは、既に本人の意思以上に保護する必要性が高い状態といえますし、本人に適切に判断する能力があるとはいえないためです。

家庭裁判所による判断で、保護が必要と認められた場合には、本人の同意がなくとも、成年後見が開始することになります。

⇒『後見申立に必要な書類』に関するトピックスはこちら

 

2-1.成年後見人に認められた権利

成年後見人に対しては、「取消権」、「代理権」が認められています。

取消権」とは、本人(被後見人)のした契約行為等(法律行為)を、後見人が取り消すことができるというものです

後見相当の本人に関しては判断能力を常に欠いている状況ですので、本人を害する契約等を認識なく締結する恐れが常にある状態と言えるでしょう。

そこで法律上、後見人は、本人(被後見人)のした行為の全てを原則取り消すことができる、と規定しています。

これにより、例えば騙されて高額な宝石や絵画を購入した場合、家の増改築の請負契約等、本人がした行為は原則すべて取り消すことができますので、後見人としては安心です。

しかし、これには一部例外があり、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は取り消しの対象外とされています。

例えば、スーパーで夕食のお弁当を購入した、コンビニでお茶を購入したとの行為まで取り消せるとなった場合、お店に損害を与えてしまう恐れがあります。

また本人にも取り消しにより返還義務を負わせることにもなり、不都合が生じてしまうため、このような例外規定を設けているのです。

また、後見人はすべての法律行為について「代理権」が与えられます。

「代理権」はイメージがしやすいかと思いますが、本人に代わって本人のために法律行為を行い、その効果が本人に帰属する、というものです

この代理権に関しては後見相当の本人の保護必要性の高さから、全ての法律行為について自動的に後見人に付与されます。

 

3.保佐について

法律上、保佐となる方は、「精神上の障害(認知的障害・精神障害等)により、事理を弁識する能力が著しく不十分である者」とされてます。

つまり、判断能力が無い状態ともいえないが、著しく不十分であるため、財産管理や生活の組み立てに関して、一定の強い保護が必要といえます

本人の状態について家庭裁判所の判断がこのような場合には、「保佐」が選択されます。

なお、本人の状態に関して申立の際に提出する医師の「診断書」に基づいて家庭裁判所が判断し、判断がつかない場合には、医師による鑑定が行われる点は、後見の場合と同様です。

保佐の申立に関しては、後見の場合と同様に本人の同意は不要です。

判断能力が後見の場合よりもあるとはいえ、この保佐の場合も、本人保護の必要性が高い状態といえますし、やはり本人に適切に判断する能力があるとはいえないためです

保佐の場合には、民法上に規定されている重要な財産に関しての行為に関しては、保佐人の同意無く行うことができないとされています。

重要な財産に関しての行為は、下記の通り、民法13条1項に規定されています。

①原本を領収し、又は利用すること
②借財又は保証をすること
③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
④訴訟行為をすること
⑤贈与、和解、又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること
⑥相続の承認若しくは放棄、又は遺産分割をすること
⑦贈与の申込を拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること
⑧新築、改築、増築、又は大修繕をすること
⑨第602条(※短期賃貸借)に定める期間を超える賃貸借をすること
⑩①から⑨に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること

 

①は預貯金の払い戻しを受ける行為や、貸金の返済を受ける行為利息付の金銭貸付等がこれに当たります。

なお、利息や賃料の領収は「元本の領収」にはあたらず、被保佐人単独で行うことができます

 

②は借金や、他者の債務の保証をする(保証人になる)等がこれに当たります。

なお、約束手形の振出も「借財」に当たります。

 

③は不動産の売買不動産に対して抵当権を設定する、不動産の賃貸借契約の合意解除株式や著作権の放棄等がこれに当たります。

また、高額な金銭や品物を贈与したり、通信販売等で高額商品を購入する、あるいは有料老人ホームの入所契約等もこれに当たります。

 

④は訴訟の提起、訴訟の取り下げがこれに当たります。

なお、相手が提起した訴訟に応訴する場合はこれには当たりません。

 

⑤は他人に高額な財産を贈与したり、和解や仲裁合意(紛争の判断を第三者に一任する合意)をする行為がこれに当たります。

 

⑥は本人が相続人になった場合に、その相続について承認や放棄をすることや、遺産分割協議を行うことがこれに当たります。

 

⑦は本人に利益となる贈与や遺贈を拒絶する行為がこれに当たります。

 

⑧は本人が所有する家屋の新築・改築、増築、大修繕をすることがこれに当たります。

 

⑨は民法602条に規定する短期賃貸借を超える期間に関しての賃貸借がこれに当たります。

具体的には、山林は10年、その他の土地は5年、建物は3年、動産は6か月を超える場合にこれに当たります。

 

⑩は例えば、本人の子ども(未成年)のために、本人が親(法定代理人)として子どもを代理して不動産売買や高額商品の購入等行った場合がこれに当たります。

被保佐人であっても親になることももちろんありますので、そのような場合に備えてこのような規定が置かれています。

 

以上のような行為を行うには、保佐人の同意が必要になります。

同意を得ないでした行為は、保佐人が取り消せることになります。

したがって、同意権のある行為に取消権もあるという関係になり、両者は表裏一体となっています。

 


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