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目次

 

1.軽率な行動で相続権は剥奪される

皆様は、『相続欠格』という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

相続が発生すると、亡くなった方の配偶者、子や孫等、一定の要件を満たせば法律上当然に相続権が発生します。

しかしながら、その相続権を持った人が被相続人を殺めてしまったり、自己にのみ有利となる行為(強迫して遺言を書かせる等)をしてしまうとどうなるでしょう。

このような行為の他にも、軽率な行動をとり民法で定める一定事由に該当してしまうと、法律はその相続人から相続権をはく奪してしまいます。

これを相続の欠格事由(相続欠格)と呼びます。

では、相続の欠格事由にはどういったことが該当するかといえば、民法では下記のように規定しています。

「被相続人又は先順位の者を故意に死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者は、相続人となることは出来ない。」

 

被相続人等を殺めようとする行為は、欠格事由に該当し相続人になれないことは当然として、その他にもうっかりしたことで欠格事由に該当してしまうケースがあります。

次項では、当法人の司法書士が相談を受け、実際に欠格事由に該当した事例を紹介します。

 

2.意図せず相続欠格となってしまった実例

ご相談内容は次のようなものでした。

【事例1】

  • 夫を亡くした妻からの相談
  • 夫婦間に子はなく、法定相続人は妻と被相続人の兄弟姉妹の7人
  • 夫は「妻に相続させる」旨の自筆証書遺言を遺していた

妻と第三順位の兄弟姉妹の相関図

相談者は亡き夫が自筆で書いた遺言書をもっており、この遺言書を使って不動産の名義変更や預貯金の解約等諸々の相続手続きをしてほしいとの相談でした。

自筆証書遺言の形式的有効要件として下記事項があります。

  • 全文自署
  • 日付の記載
  • 氏名の記載
  • 押印

自筆証書遺言の詳細は【遺言の書き方と特徴】をご覧下さい。

実はこの遺言書、司法書士が確認したところ、日付の記載がありませんでした。

そのため、当該遺言は無効で手続きには使うことが出来ず、6名のご兄弟を含めた相続人全員で遺産分割協議をし、手続きを進めなくてはいけないことをご説明したところ、途端に相談者の表情は激変したようです。

『私がここに日付記載すればいいんでしょ。亡くなる少し前に書いてくれたから、平成●年●月●日て書きましたから。』

被相続人の夫と築き上げてきた遺産のいくらかを相続分として兄弟達に分配しないといけないことに気を悪くした相談者は、司法書士が少し席を外した隙に遺言書に日付を記載してしまったのです。

これは、民法891条5項にいう、遺言書の偽造ないしは変造に値し、欠格事由に該当します

目の前で、偽造行為を目の当たりにしてしまった当法人の司法書士は、ご依頼を断るしかありませんでした。

この相談者はこの時点で相続欠格事由に該当したため、一切の相続権を剥奪されてしまいます。

日付の記載さえしなければ、最低でも遺産の4分の3相当は取得できたはずなのに、軽率な行動をとってしまったが故に、一切の財産を相続することが出来なくなってしまったという訳です。

 

3.遺言書偽造により相続欠格となってしまった実例

次に紹介するものは、遺言書を偽造したことによる相続欠格事例です。

【事例2】

  • 生前に遺言を遺した父に相続が発生
  • 遺言内容の異なる2通の遺言書が金庫から発見される
  • 2016年8月1日付の『長女にすべての財産を相続させる』内容の遺言書
  • 2016年8月16日付の『長男にすべての財産を相続させる』内容の遺言書
  • 遺言書の書体・内容を不審に思った長女からのご相談

 

90歳の父が2016年8月20日に死亡し、遺言書が自宅金庫から発見され、その字体が明らかに父には当然書けないだろうと思われる、楷書で書かれていたとの事です。

その遺言には、『長男に全ての財産を相続させる。』との内容が記載されていました。

更に後日、日付を異にし、遺言内容も全く異なる別の遺言が発見されました。

その遺言書は『長女に全ての財産を相続させる。』との内容が記載されており、震えるような手で書いたと推測される、ミミズが走ったような文字で記載がなされていました。

両遺言の作成日付は、長女へ相続させるとした遺言が2016年8月1日付、長男へ相続させるとした遺言が2016年8月16日付であり、民法では、二つ以上の遺言の内容が異なる場合、発見した日付ではなく、作成された日付が後の遺言の方が形式的に有効となります

したがって、上記事案においては、2016年8月16日付の長男へ相続させるとした遺言が形式的に有効となります。

しかし、不審に思った相談者が持参した2通の遺言を見比べてみると、明らかに字体が違うのです。

 

遺言者は、死亡直前に末期の肝臓がんに侵され闘病生活を行い、生死を彷徨うような状況であった為、長男へ相続させるとした遺言は、遺言者が本当に自署したか疑義が残ります。

この点については実務上、法務局での遺言を利用した不動産の名義変更・金融機関の預貯金解約等は形式的に審査を進めるため、上記事案について長女への遺言が有効で長男への遺言が無効であるとの実質的判断は一切されません。

司法書士の立場からしても、個々のご家庭の状況や歴史を判断することが困難な為、形式的に判断をせざるを得ないのが現状です。

しかしながら、明らかに不自然な上記事案につき、依頼者である長女に弁護士を紹介し、遺言無効確認訴訟を提起した結果、訴訟の継続中に長男が遺言を偽造したことを自白し、長男へ相続させるとした遺言は無効となりました。

遺言を偽造した者は、民法上相続欠格者として扱われる為、当該長男は相続人でないものとみなし、無事長女へ相続させる手続きを終了させました。

遺言は、公正証書遺言・自筆証書遺言に関わらず同等の効力があります。

そして、二つ以上の遺言がある場合、遺言内容が異なる部分に関しては後の日付の遺言が有効として扱われます

実際の手続きにおいては、字体等の実質的な部分に触れず審理が進められる為、今回取り上げた事例のように疑義が生じる場合は、遺言無効確認訴訟等も検討してみても良いかもしれません。

 

自筆証書遺言の有効性の判断や、実務上手続きに利用できるかは、非常に難しい問題で、専門家に見てもらうことが一番有益です。

是非、まずは当法人までご相談下さい。

 

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