お問い合わせは:03-5720-1217

相続手続きと株式実務② (2020.05.14)

【相続手続きと株式実務② ~配当金~ 】

 

前回のトピックスで、相続手続きと株式実務を取り上げました。

【相続手続きと銀行実務の実態①】はこちら

【相続手続きと銀行実務の実態②】はこちら

【相続手続きと株式実務①】 はこちら

 

前回の相続トピックスをご覧になり、株式の相続手続きは「株式の移管手続きをすれば終わり」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

しかし、実務上は、配当金の取り扱いにも十分注意する必要があります。

そこで、今回は相続手続きと配当金について取り上げます。なお、株式には上場株式と非上場株式の2種類がありますが、前回同様、上場株式の場合を前提とします。

 

 

目次

1.配当金とは

2.配当金の受け取り方法

3.メリット・デメリットは??

4.再交付や申請の委任をしたい場合

5.未受領配当金の受取方法

6.配当金に関する税務

 

 

1.配当金とは

配当金とは、企業が株主に分配する利益のことを言い、株主が保有する株数に比例して分配されます。

通常は決算日時点の株主に配当が行われますが、特別大きな利益がある年や会社の記念の年などには、特別配当、記念配当といったように別の時期にも配当がなされることがあります。

配当は毎年必ず行われるものではなく、業績不振のときや、業績好調でも企業の経営方針によって行われないこともあります。

 

 

2.配当金の受け取り方法

配当金の受取方法は以下の4種類あります。

 

(1)株式数比例配分方式

上場株式の配当金やETFREITの分配金を証券口座で受け取る方法のことです。

この方式を利用すると、配当金や分配金が支払い開始日に自動的に入金されます。

なお、同一銘柄を複数の証券会社で保有している場合は、その証券会社の口座で保有している株数に応じて、別々に配当金が入金されます。

 

(2)一括振込方式(登録配当金受領口座方式)

保有する全ての株式などの配当金を、一つの銀行預金口座で受け取る方法です。

 

(3)配当金領収証方式

発行会社の株式事務を代行している信託銀行から送られてくる配当金領収証などを金融機関に持参して現金で受け取る方法です。

ほとんどの場合、ゆうちょ銀行の窓口で受け取ることになります。また、対象銘柄が信託銀行等の特別口座で管理されている場合は、通常この方式で配当金が支払われます。

具体的には、配当金領収証の表面に受領印を押印し、配当金領収証の裏面に記載の取扱金融機関(ゆうちょ銀行等)へ持参することで配当金を受け取ることができます。

受領印は銀行や証券会社の届出印や実印以外のものでも受け取り可能です。配当額や金融機関によっては、本人確認書類(運転免許証等)の提示が必要な場合があります。

(あらかじめ金融機関にご確認ください。)

 

(4)個別銘柄指定方式

配当金を受け取る銀行預金口座などを、銘柄ごとに指定する方法です。

従来は(3)の配当金領収証方式が主な受取方法でしたが、株券の電子化に伴い、2009年から(1)(2)の方式が加わりました。

(3)の配当金領収証方式以外の方式を利用するには、あらかじめ証券会社に申し込む必要があります

 

 

3.未受領配当金とは

お手元の株式資料の中に、「配当金領収証」などと記載された書面が出てきた場合は要注意です。

亡くなった方の保有株式に関して、まだ受け取っていない配当金が存在している可能性があります。

このようなことが起きてしまう例としては、配当金領収証の交換期限切れが該当します。配当金領収証には、銘柄ごとにゆうちょ銀行窓口での払渡期間が設定されています。通常は1ヶ月程度で期限切れになってしまうため、配当金額が少額な場合、忙しいとゆうちょ銀行の窓口に行くを後回しにしてしまい、そのまま払渡期間を過ぎてしまうのです。

この払渡期間を過ぎた場合でも配当金の受取は可能ですが、配当金領収証を送付した信託銀行等での手続きが別途必要となります。受け取っていない配当金があるか調査したい場合も同様です。

なお、払渡期間とは別に定められた配当金の除斥期間を経過すると、配当金を受け取ることができなくなります。配当金領収証を受け取ったら早めに配当金を受け取るようにしましょう。

 

 

4.配当金の相続手続き上の取り扱い

亡くなった方名義の配当金であっても、受け取ることは可能です。信託銀行等に連絡し、所定の手続きを行ってください(手続きの詳細は5.で後述します)。

相続開始後に支払われた配当金は、家賃収入等と同様、各相続人が法定相続分で取得することが原則です。

しかし、全ての相続人の合意によって、相続財産に加えて遺産分割の対象とすることができるという判例(家賃収入について)があり、実務上はそのようにすることも多いです。この場合、配当金は遺産分割が決定するまでの間、相続人全員の共有財産となり、配当を請求する権利も各相続人が有します。

全相続人の合意がないまま、金融機関の窓口に配当金領収書を持参し、特定の相続人が配当金を受け取ったとしても、受け取った人のものにはなりませんのでご注意ください。

 

 

5.未受領配当金の受取方法

(1)申請書類の取り寄せ

まず、対象銘柄を管理する信託銀行等の証券証券代行部に連絡し、未受領配当金を受け取るための申請書類を郵送で取り寄せます。

連絡をすると1~2週間程度で会社所定の必要書類がお手元に届きます。

 

(2)必要書類の準備

未受領配当金を受け取りにあたっては、上記1の申請書類の他に、以下の書類も準備しなれけばなりません。

 

・亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(戸籍・除籍・改製原戸籍)

・相続人全員の現在の戸籍謄本

・遺産分割協議書(相続人全員の署名とご実印の押印が必要)

・相続人全員の印鑑証明書(有効期限あり)

 

特に戸籍の収集に関しては、多くの場合、複数の役所に発行請求をかけることになります。この作業に最短でも1ヶ月はかかりますので、早めのご対応が必要です。

 

(3)支店窓口にて株式移管手続き

信託銀行等の窓口で手続きを行い、相続人名義の口座に未受領配当金を振り込んでもらいます。窓口での手続きに1時間ほどかかり、その後、振込完了までに1ヶ月程度を必要とします。

なお、この手続きは支店窓口で行うことをお勧めします。

郵送で行うことも出来ますが、この場合、戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員分の印鑑証明書の原本を提出する必要があります。特に複数の証券会社や信託銀行が相続手続きの対象となる場合、これらの返送があるまで、他の金融機関への手続きは行えないことになりますのでご注意ください。

なお、営業時間については、信託銀行の場合、通常は平日9時~15時までとなります。

 

 

6.配当金に関する税務

配当金が相続財産に該当するかどうかは、「相続開始日」と「配当基準日」、「配当確定日」、「配当を受け取った日」の4つの関係によって決まり、次のように取り扱われています。なお、配当基準日と配当確定日の意味は以下のとおりです。

 

「配当基準日」・・・配当などの権利が得られる日のことです。決算日がこれにあたります。

「配当確定日」・・・実際の配当金が確定して、配当金交付の効力が発生される日のことです。

通常はその会社の株主総会の開催日が配当確定日となります。その後、株主総会における決議後に配当金の支払がなされます。

 

(1)相続開始日が配当基準日の前の場合

相続人の配当所得として、相続人の所得税の対象に含めることになります。

(相続税の計算対象に含める必要はありません。)

 

(2)相続開始日が配当基準日から配当確定日までの間の場合

相続税の対象となります。

このケースの場合、株式保有者である被相続人は配当基準日時点では生存しているため、配当金を受け取る権利を有します。その後、被相続人が亡くなり、後日支払われた配当金については、被相続人が保有していた権利が実現したものとしてとらえ、「配当期待権」として相続財産に計上することになります。

 

(3)相続開始日が配当確定日から配当を受け取るまでの間の場合

相続税の対象となります。

上記(2)のケースと異なり、生前、既に配当金交付の効力が生じているため、未収配当金として扱います。

 

(4)相続開始日が配当を受け取った後の場合

受取配当金がまだ残っていれば、現金預貯金として相続税申告がなされることになります。

(配当金という名目での申告は不要です)

また、この配当金は被相続人の配当所得にあたるため、別途準確定申告の対象となります。

※配当基準日や配当確定日は銘柄ごとに異なります。

上記のどのケースにあたるのかを判断するには、発行会社のIR資料などを事前に調べる必要があります。

 

 

株式の相続では株式の移管だけでなく、配当金にも注意を払う必要があります。

株式の銘柄ごとに配当金の支払方法、配当金の有無を確認のうえ、未受領配当金の受取手続きや、相続開始時期に応じて適切な税務申告等を行わなければなりません。

銘柄数が多いほど相続人様への負担も大きくなりますので、お早めに当法人にご相談下さい。手続きの進行見込み等、経験則を活かしてご提案させて頂きます。

 

 

お気軽にご相談ください。

法定相続情報証明制度とその利用 (2020.05.11)

【法定相続情報証明制度とその利用】

 

法定相続情報証明制度とは、亡くなった人(被相続人)の法定相続人が誰で、それぞれ被相続人とどのような間柄なのか、という情報を証明するための制度で、2017年5月29日より開始された比較的新しい制度です。

法務局に所定の手続きをすることで、認証文が付記された法定相続情報一覧図の写しが何通でも無料交付されます。

この一覧図は被相続人と各法定相続人との間柄を一覧化した図の事であり、この一覧図を使うことにより、従来の戸籍謄本等の大量な書類の代わりに法定相続情報を証明できるので、相続手続きを円滑に進めることが可能となりました。

(※制度の利用は任意ですので、従来通りの方法で相続手続きを進めても差し支えありません。)

 

しかし、開始当初はこの法定相続情報一覧図を使った相続手続きはなかなか浸透しませんでした。

と言うのも、法務局への相続登記に関してはすんなりと受け入れられましたが(さすがに法務局発行ですので、受け入れられなければ困りものですよね。)、相続税申告で税務署へ提出する、または預貯金の解約の際に金融機関に提出した際に、受付担当者がその存在を認識しておらず、『被相続人と各相続人の戸籍謄本等がなければ手続きできません。』と突き返されたり、『確認します。』とかなり時間を取られたりすることが多々あったようです。

 

昨今はようやく多くの機関にその存在が周知されたようで、大分スムーズに手続きをおこなえるようになりました。

ここで今いちど、申請から活用法について触れてみたいと思います。

 

目次

1.誰がどのように利用できるの??

2.手続きの流れ

3.メリット・デメリットは??

4.再交付や申請の委任をしたい場合

 

 

1.誰がどのように利用できるの??

法定相続情報証明制度はその名前の通り、被相続人と各法定相続人についての情報を証明する制度ですので、相続人のみが利用可能です。主に次の手続きでの利用が考えられます。

 

・不動産登記(相続登記)

・預貯金の名義変更や解約

・株式の名義変更や解約

・投資信託の名義変更や解約

・相続税申告

 

未だ対応していない一部の金融機関を除けば、必要な戸籍謄抄本の束の代わりに法定相続情報一覧図の写しを提出をすることで各機関での手続きが可能です。

 

 

2.手続きの流れ

必要書類及び手続は下記の通りです。

 

①必要書類の取得(戸籍等)

②「法定相続情報一覧図」の作成

③「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の作成

④管轄法務局へ申請

 

 

①必要書類の取得

≪必ず必要となるもの≫

・被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本と除籍謄本の全て

・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票の除票

・相続人全員の現在の戸籍謄抄本

・申出人となる相続人の氏名と住所を確認できる公的書類

 

上記公的書類については、それぞれ本籍地の役所にて(住民票の除票のみ、被相続人の最後の住所地の役所)取得する必要があります。これらの書類は一覧図の交付とともに還付されます。

申出人を証明する公的書類については、住民票記載事項証明書(住民票の写し)・戸籍の附票・運転免許証のコピー・マイナンバーカードの表面のコピー(コピーには自署での『原本と相違ない』の旨を記載し、押印する)を提出します。こちらは還付されず、原本出し切りとなります。

 

また、法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合には、各相続人の住民票記載事項証明書(住民票の写し)の提出が必要となります。こちらは希望すれば還付してもらうことが可能です。

 

 

②「法定相続情報一覧図」の作成

法定相続情報一覧図には、被相続人と法定相続人全員の関係が分かるように記載します。

このとき、既に亡くなっている相続人に関しては続柄のみ記載し、代襲相続が発生(相続人が被相続人より前に亡くなっていて、その者に更に相続人がいる場合)している場合、亡くなった相続人は「被代襲人」と記載し、被代襲人の相続人は「代襲相続人」という扱いとなります。

(詳細は法務局サイトの『主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例』よりご確認ください。)

また、数次相続が発生(被相続人よりも後に相続人が亡くなっている場合)している場合、法定相続情報一覧図は一つにまとめることが出来ませんのでご注意ください。

 

 

③「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の作成

①②の書類を法務局に提出するために、所定の形式での申請書を用意する必要があります。

フォーマット、記載例・注意事項については下記をご参照ください。

 

『申出書様式』(Word形式:24KB)

『申出書の記入例』(PDF形式:262KB)

(参照:法務局サイト「法定相続情報証明制度の具体的な手続について】)

 

 

④管轄法務局へ申請

①~③の全てを用意し、管轄の法務局・出張所へ提出します。こちらは窓口・郵送どちらでも申請可能です。

 

≪申請可能な法務局・出張所≫

・被相続人の死亡時の本籍地

・被相続人の最後の住所地

・申出人の住所地

・被相続人名義の不動産の所在地   のいづれか

(管轄エリアについては、法務局サイト『管轄のご案内』よりご確認ください。)

申出が受理されると、約一週間ほどで一覧図が交付されます。(不備があった場合や時期によって交付に要する時間は異なりますのでご注意ください。)

窓口で交付を受けるには申出書に押印した印鑑を持参します。郵送で申出した場合、返信用封筒と切手を同封しなければなりません。

 

 

3.メリット・デメリットは??

法定相続情報証明制度を利用する最大のメリットは、各相続手続きを同時並行で進行できることです。

従来の相続手続きでは戸籍謄抄本・除籍謄本等の原本を使った手続きの為、相続財産が多岐にわたると多大な時間を費やす必要がありました。

 

≪従来の手続き≫

法務局の登記申請で戸籍提出→返送後、金融機関Aへ提出→返送後、金融機関B

各手続きが終了してから次の申請をするため、前の手続きが長引くほど時間がかかってしまう。

 

≪法定相続情報証明制度を利用した手続き≫

法務局の登記申請&法定相続情報一覧図の交付申請

→返送後、金融機関Aへ提出(同時進行)

→返送後、金融機関Bへ提出(同時進行)

→返送後、証券会社Cへ提出(同時進行)

↑必要通数分申請することで、同時並行で手続きが可能となり、大幅に時間短縮できる

 

相続税申告が必要な場合、相続発生後10ヶ月以内に申告するという時間制約があるため、手続き回数が多ければ多いほどこの時間短縮効果は大きく感じられるでしょう。

デメリットは、

・法定相続情報一覧図と申出書の作成・申請をすること

・相続人の住所地が変更になった場合はその書類を追加して各申請をしなければならない

が挙げられますが、この制度を利用しなかったとしても各手続に必要な書類等に変更はない(原本還付が不可な機関があった場合、むしろさらに取得の手間がかかる)為、特筆すべき点は無いように思います。

 

 

4.再交付や申請の委任をしたい場合

法定相続情報一覧図は、金融機関によっては有効期限があるケースもあります。(取得後6ヶ月以内など)

このとき、再交付を受けられるのは、申出人だけで、他の相続人は受ける事が出来ません。再交付可能な期間は、申出の翌年から起算して5年間となっており、再交付に関しても費用はかかりません。

法定相続情報一覧図の交付申請は相続人以外でも親族代理人の他、資格者代理人(司法書士・行政書士・弁護士・土地家屋調査士・社労士・弁理士・海事代理士)を指定することもできます

特に不動産の相続が絡んでくる場合、最終的に登記をできるのは司法書士のみですので、(弁護士も登記は出来ますが、争いがない場合の遺産相続登記を受任するケースはごくわずかと言えるでしょう。)登記と合わせて依頼するケースが多いようです。

 

このように利用価値の高い法定相続情報証明制度ですが、この制度を利用するしないに関わらず、相続手続きをやるにあたって、避けては通れないのが戸籍取得にかかる労力です。

普段滅多に必要のない自分の戸籍を取得するのですら、役所で困惑した経験はありませんか?これがあまり関わりのない相続人や、被相続人の昔の本籍地を調べるとなると、余計億劫になってしまうものです。

当法人にご依頼を頂いた相続人様でも、一度はご自身で頑張ってみたものの、あまりに複雑で昔の戸籍の読み方が分からず、最終的に諦めて頼みに来た、という方が多くいらっしゃいました。

 

時間に限りがある相続手続きで後々後悔されないよう、是非一度当法人までご相談ください。

 

お気軽にご相談ください。

遺言が無効となったケース~公正証書遺言編~ (2020.05.08)

【遺言が無効となったケース~公正証書遺言編~】

 

前回に引き続き、遺言が無効となったケースで、今回は公正証書遺言を取り上げてみたいと思います。

 

≪遺言に関する過去の記事はこちら≫

⇒【遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~】はこちら

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】はこちら

⇒【遺言の種類と書き方~公正証書編~】はこちら

 

公正証書遺言が無効となるケースとしては、全体の件数に対する割合としては非常に少なくなる傾向があります。

なぜならば、公正証書遺言は法律の専門家である司法書士と公証人が、遺言者本人からヒアリングした内容に沿って打ち合わせの上、作成を進めていくからです。

司法書士・公証人が関与すれば、死後の不動産の名義変更の観点を踏まえながら、不動産等の財産について、登記簿謄本・評価証明書等公的書類を取り寄せていく為、無効となるケースは皆無と言っても等し差し支えないでしょう。

 

しかし、稀に無効となるケースで、代表的なものが2つほどありますので取り上げてみます。

①遺言作成時に遺言者本人が認知症等を患い、遺言能力がないと判断される場合

②遺言作成時に、司法書士等の専門家が公証人との間に入らず、本人と公証人のみで遺言作成がなされた場合

 

①については、従来から問題視されているのですが、私見を述べると、「避けられない」と言っても過言ではないかと思います。

なぜなら、公証人は医療の専門家でない為、『あなたは認知症であるから遺言をする能力がない』と判断が出来ないからです。

実務上、本人を目の前にしてこの事を告げるのは非常に勇気のいることで、人道的な観点からも非常に繊細な事柄なのです。

 

軽度の認知症患者は、通常の生活が出来て、必要最低限の質問にもハキハキと答えられる傾向にあり、初回の会話の印象では通常人となんら変わりはありません。

しかし、ずっと会話をしていると、同じことを何度も繰り返し発言したり、重要な財産の処分等はする能力がない場合が、一定程度あるのです。

 

実際の公正証書遺言の作成は、余程難しい遺言内容でない限り、最低限の本人確認をしたうえで、遺言内容を読み上げて終了します。そこでは必要以上に認知症であるか等の確認は行われません。

ですので、相続発生後に遺言無効確認訴訟を提起された場合、当時の被相続人の状態によっては一定程度の無効確認判決が出てしまうのです。

ここで、一定程度という表現を使いましたが、認知症だから全てが無効となるわけではないのです。

遺言無効確認訴訟においても裁判官は、「公証人が関与して作成している遺言であるから、有効なのではないか?」との推測から入っていくのが通常です。

また、民法では遺言は15歳になれば出来ると規定されていることから、完全な成人と比べて、判断能力が乏しくても、遺言は有効との推測が働いていきます

仮に、訴訟提起をした相続人が、当時の遺言者のカルテを主治医から取り付け、遺言能力がなかったことを立証していけば話は変わる可能性はありますので、ここでは一定程度と表現を留めておきます。

カルテが出てきた場合でも、認知症であったから即時無効との判断が下される訳ではなく、当時、遺言者が置かれていた事情、遺言を書くに至った動機・経緯、遺言の内容等を総合考慮して判断が下されます

 

上記から言えることは、まずはご高齢で遺言をされる場合、きっちりと医師の診断書を取り付けることが重要かと考えます。

医師の診断書を取り付けるのは、実務上困難を伴う事ですが、医師に粘り強く交渉をしてみましょう。

また、遺言本文以外の事項に、付言事項(法的効力のないメッセージのようなもの)を盛り込むことが出来ますので、どうしてこういった遺言内容にしたのか、経緯や動機を出来るだけ本人の言葉で表現していく事もお薦め致します。

 

次に②について取り上げますが、②の場合で無効となるケースはさらに稀です。

正確には無効と言うよりも、有効な遺言だけれども、公証人が的確にアドバイスをせずに作成したが為に、手続きに利用出来なくなったケースです。

 

実際の実務で、使えなかった事案を1つ取り上げてみます。

『遺言者●●は、遺言者の長男●●が遺言者の妻●●の生活の面倒一切を看ることを条件として、遺言者の財産一切を相続させる。』

との遺言がなされたケースで、遺言者死亡後に不動産の名義変更を長男から依頼されました。

 

上記事案での遺言内容のうち、最大のポイントは条件と言う文言です。

この遺言を用いて、不動産の名義変更をしようとした場合、遺言者の妻の生活の面倒一切を看た事を法務局に立証しない限り、法務局は手続きをしてくれません。

 

さあ、どうやって立証するのでしょう?

 

生活の面倒一切を看ることという抽象的事実の立証は、非常に困難を伴います

法務局は裁判所と違い、過去の実質的な事実認定をすることに不慣れであり、登記申請前に相談を持ち掛けたところ、案の定、どういった書類を付ければ条件が成就したかを判断しかねるとの理由で、手続きを受付けられないとの回答が返ってきました。

 

上記の様な内容での遺言を希望する方も、中には一定数いらっしゃるのが事実です。

そこで、我々司法書士が遺言作成の相談を受けた場合は、死後の不動産の名義変更まで想定して、負担という文言を使っていきます。

 

実際の遺言条項では、下記のとおりとなります。

1.遺言者●●は、遺言者の財産一切を遺言者の長男●●に相続させる。

2.前条の負担として、長男●●は遺言者の妻●●の生活の面倒一切を看なければならない。

 

といった具合に作成していきます。

負担という文言を使えば、前記のような条件成就の立証書類は全く不要となります。

実質的な意味内容は同じでも、条件と負担とでは、民法上の扱いが大きく変わってくるのです。

遺言者本人と公証人が直接遺言を作成することは、不動産の名義変更をイメージすることが困難な為、お薦めできないといえる事案でした。

 

遺言作成をする場合、出来れば、司法書士を関与させて作成を進めたほうが無難であるといえますので、遺言を作成しようとされる場合は、まずは司法書士にご相談されることをお薦め致します。

そして、遺言・相続は特化した事務所でなければ、失敗する事例が後を絶たないのが現状です。

当法人では、相続に特化した部署が対応しますので、お気軽にご相談下さい。

 

 

お気軽にご相談ください。

相続手続きと法定後見制度 (2020.05.07)

【相続手続きと法定後見制度】

 

認知症・知的障害者の方が相続人に含まれる場合、相続手続きの一環として、必ず申立て、利用しなければならないのが法定後見制度です。

今回は、相続手続きで必要な法定後見制度をテーマにお話をしたいと思います。

 

まず、法定後見制度は、認知症や知的障害で判断能力を欠く、又は、判断能力が不十分な成人の方(未成年者は親権・未成年後見で対応)の財産管理・身上監護を適切にする為に設けられた制度です。

 

認知症や知的障害には、その症状・度合いに応じて、民法上、次の区分けに応じて、家庭裁判所が『後見人・保佐人・補助人』を選任していきます。

成年被後見人…精神上の障害により事理弁識能力を欠くもの。→後見人 

成年被保佐人…精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分なもの。→保佐人

成年被補助人…精神上の障害により事理弁識能力が不十分なもの。→補助人

 

相続手続きを行っていく際、故人が遺言を残されている場合を除き、遺産分割協議という、相続人全員での遺産分けの話し合いが必要となります。

この遺産分割協議は、全体の相続手続きの90%以上を占めると言われており、ほとんどの場合、遺産分割協議が必要となります。

 

遺産分割協議は、各相続人が保有する法定相続分を任意に放棄したり譲渡したりする、云わば法律行為であり、その意味内容を適切に把握して意思表示をすることが重要となります。

 

この点、認知症のお年寄りや知的障害の方は、通常人と比べると判断能力が不十分と言え、遺産分割協議の中で他の相続人に上手く言いくるめられたりと、自己の法定相続分を安易に失ってしまう危険性があります。

そもそも、重度の認知症や重度の知的障害であれば、意識がなく寝たきりであったりと、全く意思表示が出来ない例も少なくありません。

その為、わが国の相続手続きにおいては、真正な遺産分割協議の成立を確保する為、前述の法定後見制度を利用して、判断能力の不十分な相続人に対して、後見人を選任し、判断能力の不十分な相続人の財産(ここでは法定相続分)を守ろうという運用がなされています

 

前述の法定後見の中で、実務上圧倒的に多く家庭裁判所に選任申立をされるのが、成年後見人と保佐人の制度です。

 

成年後見人とは、成年被後見人の法定代理人と位置づけられ、日用品の購入等を除き全ての法律行為を代理していく、云わば未成年者に対する親権者のような働きをする人のことを指します。

一方、保佐人とは、民法13条に規定された法律行為(遺産分割協議や売買契約、建物の大規模修繕、借入、保証契約等)に関し、被保佐人がした法律行為(例えば遺産分割協議)に同意を与える働きをする人のことを指します。

 

どちらの制度も、民法に定められた申立権者(配偶者、四親等内の親族、検察官等)が申立人となり、家庭裁判所へ申立しなければスタートしていかず、相続手続きはストップしてしまいます。

その為、当法人が相続手続きの相談を受け、相続人の方に認知症の方等がいることを覗った場合は、即座に後見等の申立から進めていきます。

 

ところで、この後見等の申立、どのようにしていくのか?とのご相談を受けることが良くあります。

ざっと、家庭裁判所が指定する必要資料を下記にまとめますのでご参照下さい。

 

□親族関係図

□申立書

□診断書

□診断書附票

□愛の手帳写し

□本人の戸籍謄本

□本人の戸籍の附票

□登記されていないことの証明書

□後見人等候補者の戸籍の附票

□申立事情説明書

□親族の同意書

□後見人等候補者の事情説明書

□財産目録

□収支状況報告書

□財産関係の資料(通帳・保険証券写し、登記簿謄本等)

□負債資料の写し

 

上記資料を収集した上、遺産分割の場合は、成年被後見人等の法定相続分が確保された遺産分割協議案を添付していかなければなりません。

 

「自分で手続きしたい。」とのご意見を賜ることがありますが、法律や事務作業、資料収集に精通した方でないとまず不可能に近い手続きかと思われます。

法務局や官庁での書類取り寄せもあることから、お仕事をされている方にとっては尚更難しい手続きと言わざるを得ないでしょう。

 

また、被後見人の方の財産関係をよく存じて無い場合は、

・通帳の過去の履歴を見て、毎月どのような引き落としがあり支出がどうなっているのか

・どのような保険契約があるか

等の情報を読み解いていく必要がありますが、通帳の読み方や保険証券の読み方は慣れていないと非常に煩わしいものです。

 

また、後見等申立の費用についても質問をされる場合がありますが、

□申立手数料、収入印紙800円

□登記手数料、収入印紙2,600円

□郵便切手、5,000円ほど(裁判所に都度確認)

 

上記費用(目安)で申立が出来ます。

後は、申立添付資料の収集実費に5,000円程考慮に入れて、自力で手続きをされる場合は総額20,000円程で手続きが出来るでしょう。

後見等申立のお手伝いは、司法書士か弁護士しか出来ない決まりとなっていますが、司法書士等の専門家に依頼する場合は別途報酬がかかることとなります。

 

最後に、良く受けるご質問で、

『母の成年後見人に長男である自分がなりたいが、なるにはどうすれば良いか?』

との質問を受けます。

これは、本人の財産状況・被後見人と後見人候補者との関係性、居住関係等全ての事情を考慮して、家庭裁判所が職権で決定することになります。

つまり、手をあげても確実に後見人に選任されるとは言い切れないのです。

 

東京家裁の運用では、金融資産500万円を超えると一般的に専門職後見人といって、司法書士が選任されるケースが多いと言われています。

また、全国的な統計をみても、司法書士等の専門職が選任されるケースが七割ほどであり、親族後見人が選任されるケースは少ないと言えます。

 

成年後見人の申立手続きから審判確定には、通常3ヶ月~4ヶ月のお時間を要します。

相続人のうちに認知症の方がいらっしゃる場合等は、お早目にご相談されることをお薦め致します。

 

 

お気軽にご相談ください。

遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~ (2020.05.01)

【遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~】

 

前回までのトピックスで、遺言の種類と書き方について取り上げてみました。

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】はこちら

⇒【遺言の種類と書き方~公正証書編~】はこちら

今回は、過去に扱った事案から、遺言の有効・無効の判断について触れてみたいと思います。

 

自筆証書遺言の場合、形式的有効要件として、全文自署(一部財産目録は除く)・日付・氏名・押印が無ければ無効となることは、前回までの記述で触れていきましたが、過去に扱った事案で、自筆証書遺言が実質的に無効となったケースを取り上げて行きたいと思います。

 

自筆証書遺言に限って言えば、改ざんや偽造が立証され無効となるケースは稀にあります。

以前に取り扱った事案で、下記のようなケースがありました。

 

≪事例≫

90歳の老人が2016年8月20日に死亡し、遺言が後日、自宅金庫から発見され、その字体が明らかに90歳の老人には当然書けないだろうと思われる、楷書で書かれていたケースです。

その遺言には、『長男に全ての財産を相続させる。』との内容が記載されていました。

 

更に後日、日付を異にし、遺言内容も全く異なる別の遺言が発見されました。

その遺言には、『長女に全ての財産を相続させる。』との内容が記載されていました。

その遺言には、震えるような手で書いたと推測される、ミミズが走ったような文字で記載がなされていました。

 

両遺言の作成日付は、長女へ相続させるとした遺言が2016年8月1日付、長男へ相続させるとした遺言が2016年8月16日付。

民法では、二つ以上の遺言の内容が異なる場合、発見した日付ではなく、作成された日付が後の遺言の方が形式的に有効となります。

 

したがって、上記事案においては、2016年8月16日付の長男へ相続させるとした遺言が形式的に有効となります。

しかし、後に発見された長女へ全て相続させる旨の遺言と、先に発見された長男へ相続させる旨の遺言を見比べると、明らかに字体が違うのです。

 

遺言者は、死亡直前に末期の肝臓がんに侵され闘病生活を行い、生死を彷徨うような状況であった為、当然、長男へ相続させるとした遺言は、遺言者が本当に自署したか疑義が残ります。

 

この点に付き、法務局での遺言を利用した不動産の名義変更・金融機関の預貯金解約等は、形式的に審査を進めますので、上記事案について長女への遺言が有効で長男への遺言が無効であるとの実質的判断は一切されません。

司法書士の立場からしても、個々のご家庭の状況や歴史を判断することが困難な為、形式的に判断をせざるを得ないのが現状です。

 

しかしながら、明らかに不自然な上記事案につき、依頼者である長女に弁護士を紹介し、遺言無効確認訴訟を提起した結果、訴訟の継続中に長男が遺言を偽造したことを自白し、長男へ相続させるとした遺言は無効となりました。

 

遺言を偽造した者は、民法上相続欠格者(相続する権利をはく奪された人)として扱われる為、当該長男は相続人でないものとみなし、無事長女へ相続させる手続きを終了させました。

 

 

遺言は、公正証書遺言・自筆証書遺言に関わらず同等の効力があります。

 

そして、二つ以上の遺言がある場合でその遺言内容が異なる場合は、後の日付の遺言が有効として扱われます

 

実際の手続きにおいては、字体等の実質的な部分に触れず審理が進められる為、今回取り上げた事例のように疑義が生じる場合は、遺言無効確認訴訟等も検討してみても良いかもしれません。

 

お気軽にご相談ください。

遺言の種類と書き方~公正証書編~ (2020.04.30)

【遺言の種類と書き方 ~公正証書編~ 】

 

前回のトピックスで自筆証書遺言について触れましたが、今回は公正証書遺言の作成方法等について触れてみたいと思います。

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】はこちら

 

司法書士や弁護士等が、遺言の相談をされた場合、まず提案するのが公正証書遺言の作成と言っても過言ではないでしょう。

数ある遺言書の中で、なぜ司法書士や弁護士は公正証書遺言を薦めるのでしょう?

 

それは、遺言者や遺言者のご相続人に、それほどのメリットがあるからなのです。

公正証書遺言との対比をするため、自筆証書遺言のデメリットを各種取り上げてみましょう。

 

まず自筆証書遺言を書く場合、

全文自署・日付・氏名・押印が無い以上、無効との判断が下される可能性があり、実際、無効と判断された遺言は過去に数多く存在します

 

また、前記の有効要件をクリアしても、

不動産の表記が住所で特定されている(法務局の名義変更手続きは、地番・家屋番号と言った住所とは違う特定方法が必要)等、法務局の手続き上不備があり、有効だけれど手続き上受理されないといったケースは多々あります。

 

更に面倒なのは、

自筆証書遺言は、遺言者の死亡後、遺言を発見した相続人又は遺言の保管者において、遅滞なく遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ『遺言の検認』という手続きを経なければなりません

 

この『遺言の検認』手続きを行い、検認調書を遺言に合綴してもらった後でなければ、正式な手続きに使っていく事が出来ないのです。

もちろん、遺言の効力は(有効・無効は別として)、遺言者の死亡を機に発生していると言えるのですが、不動産の名義変更・預貯金等金融資産の相続手続きには、検認が終了していなければ、実務上受理されない扱いとなるのです。

 

前置きが長くなりましたが、公正証書遺言の場合、上記の①~③のようなリスクや手続きは一切必要がありません。

 

公正証書遺言は、遺言者が遺言の内容・趣旨を公証人(公証役場所属の公務員であり、裁判官OB・検察官OBが大多数を占める)に告げ、公証人に遺言を作成してもらい、出来上がった遺言を公証人が遺言者に読み聞かせることによって作成が完了していきます。

 

前述の公証人とは、司法試験を突破しているれっきとした国公認の法律家であり、公証人の所属する公証役場とは、言うなればミニ裁判所を指します。

各種の法律的な書面(遺言・売買契約書・賃貸借契約書・金銭消費貸借契約書・和解契約書・離婚協議書等)を公証役場で、公証人関与のもと作成することによって、その書面は公文書となり、有効性・証明力は100%に近いものとなります

 

前記①②のような有効要件の可・不可や表記ミス等は原則防止出来ますし、何しろ証明力が高く、公正証書遺言が公証役場にて半永久的に保存されることを鑑みて、前記③のような検認手続きは一切不要となります。

このような、各種メリットを考えると司法書士等の専門家は、遺言作成の相談を受けた場合、公正証書遺言作成をお薦めしているのです。

 

では、公正証書遺言作成の流れですが、前述したとおり、作成してくれるのは公証人ですが、遺言の内容・趣旨を考案するのは、遺言者本人であり、この点については公証人は具体的アドバイス・提案をすることはまずありません。

 

綿密に考えて、遺言の内容・趣旨を伝えないと、ご希望通りの遺言が作れない場合があります。

この遺言の内容・趣旨を正確に伝えることが、簡単そうに見えて意外と難しいのです。

 

特定の相続人一人に、遺産のすべてを相続させる旨の遺言を書く場合、必ず他の相続人の遺留分(法的に認められた最低限の相続分)を侵害し、後々トラブルを招く恐れがあり、遺言の趣旨を実現できない場合があります。

また、遺言者より遺産を相続する相続人が先に死亡する場合もあり、その場合、当該相続人へ相続させる旨の遺言は無効となります。

これは、遺言で、遺産の取得を指定された相続人(法律上、受遺者と呼んでいきます。)に子供がいる場合でも、特別な文言が記載されていない限り(予備的遺言と呼びます。)同様の結果となります。

 

こういった事態を防ぐため、相続を専門とする司法書士が所属する当法人では、公正証書遺言作成の際、遺言者と公証人の間に入って、遺留分請求に対抗する提案や遺留分を侵害しない遺言内容の提案、遺言者より受遺者が先に亡くなった場合を想定して、予備的遺言の提案をする等、遺言が無効にならないよう、様々な工夫・提案をしていきます。

費用については、遺言作成に必要な戸籍・評価証明書等取得の為の実費、司法書士報酬・公証人報酬が発生しますが、費用をかけて作成していく価値は充分にあると言えるでしょう。

 

遺言を書こうとご検討されている方は、まずお気軽にご相談されることをおすすめ致します。

 

 

お気軽にご相談ください。

遺言の種類と書き方~自筆証書編~ (2020.04.28)

【遺言の種類と書き方 ~自筆証書編~ 】

 

わが国の遺言の種類・方式は、民法に数多く規定されておりますが、感染症で隔離施設に隔離されたり、船舶事故等で緊急に船舶内で遺言を書いたりする場合を除き、通常の場合ですと下記の3種類の遺言の方式から選択することが一般的です。

 

≪3種類の遺言の方式≫

●自筆証書遺言

●公正証書遺言

秘密証書遺言

 

上記のうち③の秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも公開せずに秘密にしたまま、公証人に遺言の存在のみを証明してもらう遺言のことであり、通常この方式を選択される方は、ほぼいらっしゃいません。

 

では、実務で司法書士が良く目にする①の自筆証書遺言、また、司法書士がよくお客様に相続対策で提案する②の公正証書遺言の方式・書き方について触れてみたいと思います。

 

【自筆証書遺言の有効要件・書き方】

 

自筆証書遺言は、下記の要件がすべて満たされていなければ、問答無用で無効となりますので、事前に司法書士等の専門家にご相談しておく事をお薦めします。

 

□全文を自署

□日付の記載をいれる

□氏名の記載

□押印があること

 

※上記のうち、全文を自署する要件のみ、2019年1月13日から施行された改正民法により方式が緩和され、遺言の目的とする財産の記載については、登記簿謄本の写しや通帳の写しを添付(各写しのページ毎に氏名と押印が必要)することで、自署の代わりとすることが可能となりました。

 

上記要件は、あくまで遺言書としての有効要件であり、要件を満たしていることで遺言者の死後の不動産の名義変更や預貯金の解約等の諸手続きに確実に対応出来るか否か、については全く別問題となりますので、手続きを見据えた書き方というものが、非常に重要となります。

また、公正証書遺言を除き、遺言は遺言者の死亡後に、家庭裁判所による検認手続き(改ざん等を防ぐ証拠保全手続き)が必要となりますので、どうしても費用をかけずに自力で書きたいという方を除いては、公正証書による遺言作成の方が効果が絶大と言えるでしょう。

 

それでは、自筆証書遺言の実際の書き方について見ていきますが、

書き方はシンプルに、誰に何を渡したいかを記載していればそれで充分です。

 

例を挙げると、

 

『遺言者は下記財産を妻●●に『相続させる』。

 

●●銀行●●支店 普通預金 口座番号 ●●●●●●● 残高全額

所在 新宿区●●

地番 ●●番

地目 ●●

地積 ●●㎡     ...』

 

と言った具合です。

 

当たり前の様に感じるかもしれませんが、ここで注目すべきワードは『相続させる』との文言です。

多くの遺言には妻●●に『あげる』『与える』『贈与する』『譲る』との文言が書かれていることが少なくありません。

また、『遺贈する』との難しい表現をされているケースも多々あります。

 

実は上記の様な文言、相続手続きをする司法書士を非常に悩ませる文言なのです。

 

上記の、『遺贈する』はもちろんのこと、『あげる』『与える』『贈与する』『譲る』との文言は、不動産の名義変更や預貯金の解約をする場合に、法的に遺贈と解される余地があり、実際に相続手続きをする際、遺言とは全く関係の無い相続人に協力を求めなければいけない場合が出てくるのです。

 

実際は、遺言者の置かれていた当時の状況・遺言全文から読み取れる遺言者の合理的な意思を推認・解釈して、手続きの手法を検討することになります。

では、遺贈とは相続と違い、どのような意味が含まれているのか?

民法の考え方では、「遺贈とは、遺言により自己の財産を『相続人でない他人』に与える『処分行為』である。」と解釈されています。

 

ここで一旦、遺言から離れて考えてみましょう。

 

例えば、ご自身のお父様が、生前中にある物を他人にあげるなどの処分行為をしたまま、その履行をせずに死亡した場合。

お父様がなされた生前の処分行為の履行義務は、相続人全員に引き継がれ、相続人全員の協力のもと、相手方に物の引き渡しをしなければならないという事態を招くのです。

 

遺贈も、自己の財産を『相続人でない他人』に与える『処分行為』と解されているので、上記の例と何ら変わりがなく、遺言の効力が発生した瞬間(すなわち遺言者の死亡の時)に、その財産の移転義務が相続人全員に承継されます。

 

したがって、遺言の内容を実現する為には、原則、相続人全員の協力が必要となるのです

 

 

遺言は実務上、遺言者が死亡したあとに、相続人の内の一人から判が貰えなさそうと言った、何らかの理由で作られるケースが多くみられます。

せっかく、妻に一切の財産を与えたくて書いた遺言に『遺贈』との文言が使われたが為に、不仲の長男の実印・印鑑証明書を要する事態になったのでは元も子もありません。

 

相続人の一人に対し、『相続させる』との文言を使って遺言を書いた場合は、基本的には、上記の様な事態には陥りません。

 

法的な効果や、実際の手続きに対応出来るかは、相続に精通した司法書士にしか判断できないものです。

遺言を書こうと思った時、また、自筆証書遺言で相続手続きをしようと思った際、当法人にご相談頂ければ、専門の司法書士が全面的にバックアップをさせていただきます。

 

万が一、ご自身のお父様等が『遺贈する』との文言を用いて自筆証書遺言を書かれていた場合でも、あきらめる必要はありません。

当該遺言が、相続人の1人への遺贈である場合、当法人の司法書士が、関係各所に交渉・折衝をし、遺贈手続きの簡便な方法を提案したり、場合によっては一般的な相続手続きに転換して手続きを行った事案が過去に多数存在します。

 

まずは、お早目のご相談をされることをおすすめ致します。

 

 

 

お気軽にご相談ください。

「配偶者居住権」の施行とその効果 (2020.04.27)

【「配偶者居住権」の施行とその効果】

 

民法の大改正において、相続法に関して新たに「配偶者居住権」が新設されました。

令和2年4月1日よりいよいよ施行となりましたが、ここで改めてどんな内容なのか、どんな効果があるのか、などを掘り下げてみましょう。

 

目次

1.配偶者居住権ってどんなもの??

2.配偶者居住権の種類

3.配偶者居住権の要件と範囲

4.メリット・デメリットとは??

 

 


1.配偶者居住権ってどんなもの??
配偶者居住権とは・・・『残された配偶者が被相続人の所有する建物(夫婦で共有する建物でも可)に居住していた場合、一定の要件を充たすときに、被相続人が亡くなった後も、配偶者が賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利』です。

 

具体例で見てみましょう。

 

≪事例≫

Aさんはつい先日、夫に先立たれてしまった。別居している子供がおり、相続財産は自宅と預貯金だけであった。古家ではあるが、立地は戦前から所有している好立地であるため、相続税が発生してしまうようだ。

 

まず、配偶者であるAさんが自宅を相続すると、法定相続分通りに相続財産を分配するとなった場合、子供に自宅以外の財産である預貯金が渡る可能性が高いため、Aさんは、家はあっても貰える預貯金が大きく減ってしまう事になります。

分配財産がなんとか預貯金から賄えたとしても、相続税の支払いが必要となるため、払い切れないとなれば、自宅を売って支払わなくてはならないでしょう。

延納、物納といった方法もありますが、いずれの場合も遺されたAさんは今後の生活資金が不足したり、住み慣れた家を手放す事態にもなりかねません。

 

このような場合の配偶者の居住権を保護する目的で、配偶者居住権が新設されました。

これは、不動産の所有権を、配偶者が死亡するまで住み続けられる『配偶者居住権と、子供など、他の相続人が居住権以外の所有権だけを持つ『負担付き所有権』との二つの権利に分ける制度です。

 

 

 

2.配偶者居住権の種類

前述の事例では、他の相続人である子供と協議し、折り合いがつけば問題なく配偶者居住権を設定できそうでしたが、中には、家は他の相続人が相続し、残された配偶者が直ちに住居を退去しなければならない、といったケースも考えられます。

これは、残された配偶者にとっては大きな負担となると考えられます。そこで、夫婦の一方の死亡後、残された配偶者が、最低でも6か月間、無償で住み慣れた住居に住み続けられるようになりました。これを配偶者短期居住権と呼び、下記のように区別されています。

 

配偶者居住権・・・・配偶者が死亡するまで(10年、20年と限定することもできる)建物に居住できる権利(要件あり)。

配偶者短期居住権・・一定期間(少なくとも6ヶ月間)建物に居住できる権利(要件無し)。

※配偶者短期居住権に関して、新法の施行日以後は無条件でこの効果が発生します。

 

 

 

3.配偶者居住権の要件と範囲

配偶者居住権の設定にはいくつかの要件があります。

 

●相続が発生した時点において、配偶者がその建物に居住していること

●遺言で配偶者に配偶者居住権を遺贈する旨を記載している、または、遺言がない場合は相続人間の遺産分割協議において配偶者居住権を取得する旨を遺産分割協議書に記載していること

●配偶者居住権設定の登記がなされていること(配偶者と建物所有者による共同申請)

 

上記の要件を充たすことが必要となります。

 

 

 

4.メリット・デメリットとは??

メリットとしては次の2点が挙げられます。

 

●賃料なく居住できる

当然ながら、一番のメリットとしては、配偶者が賃料等の支払なくそのまま慣れ親しんだ建物に住み続けられる、という点です。更には、建物所有者の承諾を得れば、第三者に居住建物の使用又は収益をさせることもできますので、例えば、使用しなくなった建物を第三者に賃貸することで賃料収入を得て、介護施設に入るための資金を確保することもできます。

●配偶者が相続財産をより多く取得できる

夫婦に相続が発生すると、配偶者が不動産を相続するケースが多いですが、配偶者居住権を設定する事で、建物の所有権を取得するよりも低い価額で居住権の確保が出来ますので、預貯金等のその他の遺産をより多く取得することが出来ます

 

【例 2000万の評価額の建物と3000万の預貯金を妻と子供1人で遺産分割する場合】

(法定相続分での分割と仮定します。また、配偶者居住権の価値算定についても仮定での評価額となります。)

妻が建物の所有権を得る場合…

建物(2000万)+預貯金(500万)となり、預貯金も分配こそされますが、今後の生活を考えると少し不安が生じてくる金額です。

配偶者居住権を設定した場合…

配偶者居住権(1000万)+預貯金(1500万)となり、今後の生活にも余裕を持てる金額でしょう。

 

婚姻期間20年以上の夫婦間における居住用不動産贈与に関する優遇措置が適用となる場合、生前贈与した居住用不動産については相続財産には含まれないため(2019年7月1日より施行)、配偶者居住権を設定しても、原則として遺産分割で配偶者の取り分が減らされることはありません

 

このように配偶者にとって非常に手厚い今回の法改正ですが、注意すべき点もあります。

 

●2020年4月1日以後の遺言書でないと効力がない。

●配偶者居住権設定の登記の際に、配偶者と所有者での共同申請となる。

 

配偶者居住権は施行日の2020年4月1日よりその効力が認められますので、これより前に書かれた遺言書を用いて配偶者居住権の設定する事はできません

また、配偶者居住権の設定された不動産は売買対象としてはかなり不利となる(配偶者が住んでいるため、仮に購入しても済むことが出来ない・賃貸に出せない)ため、所有者となる者としっかりと話し合う必要があるでしょう。

なお、建物の取り扱いとしては賃貸しているのと同様に、配偶者が使用・修繕の義務を負う他、居住している建物やその敷地の固定資産税等を負担する事になります。

 

 

このようにまだまだ始まったばかりの配偶者居住権ですがだいたいのイメージは掴めましたでしょうか??外せないポイントとしては、

 

◎配偶者居住権の設定には登記が不可欠である!

◎スムーズな配偶者居住権の設定には遺言書を書いておくことがベター!

 

の2点が挙げられます。これらをふまえ、新制度の利用を検討されている方は、一度当法人までご相談ください。

 

お気軽にご相談ください。

相続手続きと株式実務① (2020.04.24)

【相続手続きと株式実務①】

 

過去のトピックスで、相続手続きと銀行実務を取り上げました。

⇒【相続手続きと銀行実務の実態①】はこちら

⇒【相続手続きと銀行実務の実態②】はこちら

 

今回は、相続財産に株式がある場合の実務を取り上げてみましょう。

株式には上場株式と非上場株式の2種類がありますが、今回は上場株式の場合を取り扱います。

 

故人の遺品を整理していると、預貯金通帳の他に、株式に関係する書面が出てくることがあります。

しかし、預貯金通帳と比べて、株式に関係する書面は、普段、目にすることが多くありません。

また、書面の名称や発行する金融機関も様々であるため、株式投資をなさったことがない方にとっては、これらの書面が株式の相続にどう関係するのか、非常に分かりづらいものとなっています。

そこで、株式が金融機関でどのように管理されているのか、株式の相続手続きについて触れたいと思います。

 

 

【株式の管理方法】

まず、上場株式の管理方法には、以下の2パターンが存在します。

 

証券会社の口座で管理されている場合

信託銀行の特別口座で管理されている場合

 

上記②を見て、「え、株式って証券会社で管理するものじゃないの?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、上場株式に関しては、平成21年1月5日に株券の電子化が行われ、株券は廃止となりました。

この際、従来の株券の保管方法等に応じて、以下のように管理方法が変更となっているのです。

 

①株主が株券を証券会社に保護預りしており、かつ、証券保管振替機構(以下、通称である「ほふり」と称します)の預託に同意している場合

⇒証券会社の口座でそのまま管理

 

②それ以外の場合

(例)株主自ら株券を保管している場合

株主が株券を証券会社に保護預りしているが、ほふりの預託に同意していなかった場合

⇒株式の発行会社における株主名簿管理人(主に信託銀行がなる)の特別口座で管理

 

上記に加え、証券会社と信託銀行とで発行する書面の種類も異なります(こちらは後述します)。

そのため、株主に対して株式に関する書面が発行される場合、一般的には証券会社が作成する書面と、信託銀行が作成する書面が混在することになります

これが相続人の方々が困惑してしまう理由のひとつになってしまうのです。

 

 

【株式の保有銘柄の確認方法】

さて、株式の相続手続きを行うためには、まず、故人が保有されていた株式の詳細を把握する必要があります。

故人がどの銘柄の株式を保有していたのかは、主に以下の書面で調べます。

 

●証券会社から送付される取引残高証明書

●株主名簿管理人である信託銀行から送付される配当金通知書や株主総会招集通知

 

しかし、お手元にこうした書面が残されていない場合は、ほふりに対して情報開示請求を行うことになります。

これを行うと、どの金融機関が故人の保有株式を管理しているか知ることができ、保有株式のチェック漏れを防ぐことができます。

※ただし、開示請求では保有銘柄の詳細までは分からないため、別途金融機関に対して保有銘柄の一覧を請求する必要があります。

 

 

【株式の相続手続きの流れ】

株式を管理している金融機関と、保有銘柄の内訳が分かりましたら、いよいよ株式の相続手続きです。

 

1.申請書類の取り寄せ

まず、株式を管理している金融機関に応じて、以下の部署に連絡し、相続手続きの申請書類を郵送で取り寄せます。

 

証券会社:故人が口座を持っていた支店

信託銀行:証券証券代行部

 

証券会社の場合にご注意いただきたいのは、必ず「故人が口座を持っていた支店」にご連絡いただくという点です。証券口座で管理されている場合、口座のある支店でなければ取引状況の確認が行えません。

証券会社における取引情報の確認は、実際に口座を開設している支店でしかすることができないためです。(銀行預金の口座確認は、一般的にどの支店の窓口でも手続きが可能です。)

連絡をすると1~2週間程度で会社所定の必要書類がお手元に届きます。

 

2.必要書類の準備

株式の移管にあたっては、上記1の申請書類のほかに以下の書類も準備しなれけばなりません。

 

●故人の出生から死亡までの連続した戸籍全て(戸籍・除籍・改製原戸籍)

●相続人全員の現在戸籍

●遺産分割協議書(相続人全員の署名とご実印の押印が必要)

●相続人全員の印鑑証明書(有効期限あり)

 

特に戸籍の収集に関しては、多くの場合、複数の役所に発行請求をかけることになります。この作業に最短でも1ヶ月はかかりますので、早めのご対応が必要です。

 

3.支店窓口にて株式移管手続き

証券会社や信託銀行の窓口で手続きを行い、相続人名義の証券口座に株式を移管いたします。窓口での手続きに1時間ほどかかり、その後、移管の完了までに1ヶ月程度を要します。

なお、移管手続きは支店窓口で行うことをお勧めします

郵送で行うことも出来ますが、この場合、戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員分の印鑑証明書の原本を提出する必要があります。

特に複数の証券会社や信託銀行が手続きの対象となる場合、これらの返送があるまで、他の金融機関への手続きは行えないことになりますのでご注意ください。

営業時間については、信託銀行の場合は平日9時~15時、証券会社の場合は平日9時~遅くとも17時くらいまでが一般的です。

また、以下の点について、預金の相続手続きよりも手間がかかることも念頭におく必要があります。

 

①株式移管手続きの詳細が金融機関ごとに異なります。預金の相続と比較すると、金融機関ごとの特徴が移管手続き等に反映されやすいため、それぞれの金融機関にあわせて対応を変えていかなければなりません。

 

②証券会社で管理されている場合、かつ、故人の株式を管理する証券会社に、相続人が証券口座を持っていない場合は、別途口座開設が必要です。

(預金の相続の場合、振込手数料を負担すれば他の金融機関への振込も可能です)

 

(例)故人の株式を管理する証券会社=A証券会社

相続人が口座をお持ちの証券会社=B証券会社

→B証券会社の口座へは移管できません。

A証券会社に口座を開設する必要があります

 

③信託銀行の特別口座で管理されている場合は、任意の証券会社の口座へ移管します。相続人が証券口座を一切持っていない場合、別途口座開設が必要です。

なお、信託銀行内に別の特別口座を作ってそちらに移管することは出来ません。

 

 

預金の相続の場合とは異なり、株式の相続では証券会社・信託銀行・ほふりのそれぞれに対して所定の手続きが必要となります。

相続人様への負担も大きくなりますので、お早めに当法人にご相談下さい。手続きの進行見込み等、経験則を活かしてご提案させて頂きます。

 

お気軽にご相談ください。

借金等がある場合の相続手続き②~限定承認編~ (2020.04.23)

 

【借金等がある場合の相続手続き②】

 

前回のトピックスに引き続き、今回は『限定承認』という手続きについてご紹介をしてみたいと思います。

 

⇒前回のトピックス【借金等がある場合の相続手続き①】はこちら

 

相続が発生すると、相続人は法律上、下記の3つの選択肢の中から手続きを選択することとなります。

 

●単純承認プラスの財産もマイナスの財産も一切合切相続するということ

●相続放棄プラスの財産もマイナスの財産も一切合切相続しないということ

●限定承認マイナスの財産も相続するが、そのマイナスの財産(借金)の弁済は、相続財産の中から弁済し、相続財産の中から弁済しきれないものについては責任を負わないという選択

 

実務上、圧倒的に多いのが①のケース。

続いて、多いのが②のケース。このケースは、「もはや遺産が借金しかない場合や、遺産に借金はなく不動産があるけれど固定資産税を払いたくない、そして売却しようにも買い手がつきにくい場合」等が挙げられます。

 

今回は、実務でほとんど選択されない③のケースをご紹介致します。

この限定承認という手続き、必要書類も手続きの流れも、前回ご紹介した相続放棄の手続きよりも格段に難易度があがります

 

限定承認は、適正な手続きを取って各債権者に弁済をし、余剰財産があれば相続人が取得することが出来るという制度です。

一見すると聞こえはいいのですが、手続きが非常に煩雑なのです。。。

 

一般的には、遺産を把握しきれず債務超過となっているか明らかでないため、相続放棄をした方がいいかどうか判断できない場合や、債務超過だが家業の承継のため相続財産の一部だけは確実に取得したい場合等に有効な制度といえます。

 

限定承認は、相続人全員で同時に申立をしていく必要があります

この申立の際に、借金等のマイナス財産も含めた相続財産の目録も添付していかなければならない為、事前の財産調査が必須となります。

 

また、限定承認申立後、家庭裁判所は相続人の中から相続財産管理人を選任し、選任された相続財産管理人は、相続財産の管理及び清算手続きを行っていくこととなります。

 

この相続財産管理人に選任された相続人は、故人の債権者の方々に対し、官報(国の機関紙)公告をしたうえ、知れたる債権者(取引銀行等)には各別の催告(通知と同義にとらえて頂いて結構です。)をしなければなりません

 

限定承認の手続きでは、相続財産に不動産等が含まれる場合、この不動産を換価(売却してお金に換えること)していく必要があります。

この換価手続きは原則、民事執行法に規定する競売の方法により行われますが、限定承認者が買受けを希望する場合には、家庭裁判所が選任した鑑定人が評価した相続財産の価額を支払うことによって、競売せずに買受けることが出来ます。

これを先買権の行使といいますが、この先買権の行使をすることによって、例えば、家業を承継する為に故人の不動産をどうしても取得して、その他の債務・借金は相続財産の中から支弁したいという方にとっては有用な手続きと言えるでしょう

 

上記手続きを終えると、相続財産管理人は、申し出のあった相続債権者に対し、相続財産をもって弁済をしていくこととなります。

弁済が終了してもなお残余の相続財産がある場合、相続人間で遺産分割して当該財産を取得していきます。

 

※キャピタルゲイン(増加益)への課税

限定承認をすると、相続税とは別個に、みなし資産譲渡所得税という譲渡所得税が発生します。

相続は、故人から相続人への承継という概念がありますが、限定承認をすると、相続が開始した時の時価で資産が譲渡されたものとみなされ、譲渡所得税が課税されることとなるのです。

このみなし譲渡所得税課税にも注意しながら手続きを進める必要がありますが、この課税リスクの考え方は税理士でも頭を抱えるほど難しく、容易に判断ができるものではないのが実情です。

みなし譲渡所得税は、相続財産から支払うこととなり、万が一相続財産から支払えない場合でも、相続人固有の財産から支払う義務は一切支払う義務はありませんが、事前に税理士への相談はしておいた方がよろしいかと思います。

 

このように手続きを紐解いて行くと、司法書士・税理士等が連携を図りながら進めていく必要があり、また、相続人にも相続財産に対する管理責任や競売手続き相続財産の鑑定人選任申立手続きを伴うことから多大な負担となり、家業を承継して相続財産の中から特定の財産のみを買い取りたいといったような特別の事情がない限り、あまり選択されない手続きと言えます

 

もしも、特別な事情等がある場合、お早めにご相談下さい。

 

お気軽にご相談ください。

お問い合わせ・お申し込み