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任意後見制度② (2020.08.18)

【任意後見制度②】

 

以前のトピックスで「任意後見制度」の概要をご説明させて頂きました。

⇒【任意後見制度①】はこちら

今回は任意後見制度についてより詳しくご説明致します。

 

一.任意後見契約の効力発生

自分が将来意思能力が低下したときに、支援してほしい人と任意後見契約を締結し、将来に備える制度任意後見制度になります。

では、どの時点で任意後見契約の効力が発生するのでしょうか。

 

それは、「任意後見監督人が選任されたとき」になります。

 

将来に備えて任意後見契約を締結した時点では、まだ意思能力に問題はなく普段通りの生活を続けていきます。

その後、意思能力に不安が生じ、後見支援を始める必要が出てきたときに、家庭裁判所への「任意後見を開始する」ための「任意後見監督人」の選任を申立てます

この任意後見監督人が裁判所によって選任されて初めて、任意後見契約の効力が生じることになります。

 

任意後見契約の締結…将来意思能力が低下したときに必要な支援を、本人と「任意後見受任者」とで任意後見契約の締結をします。
なお、この時点ではまだ契約内容の支援は開始されません

意思能力の低下・家裁への申立…本人の意思能力が低下したときに、本人・配偶者・4親等内の親族・任意後見受任者から「任意後見監督人」の選任申立をします。

●家裁の審判・審判内容の登記…申立内容を家裁が調査・審問し、任意後見監督人の選任の審判をします。
家裁で審判がされると、任意後見登記事項に「任意後見受任者」から「任意後見人」と記載され、任意後見監督人とともに登記されます。
ここで初めて契約の効力が生じ、支援が始まります。

しかし、任意後見契約を締結した時点で生活に対する不安があったり、意思能力は問題ないが金融資産の管理をお願いしたい等、様々な状況が考えられます。

そこで、任意後見制度には3つのパターンがあり、本人の生活状況を支援する仕組みが制度として作られています。

 

二.任意後見のパターン

以前のトピックスの「任意後見制度の流れ」の中で1つ目の項目としてあげました、任意後見の3つのパターンについてご説明します。

 

①即効型…任意後見契約と同時に任意後見監督人選任申立を家庭裁判所に行う

②移行型…任意後見契約と任意代理契約を同時に締結

③将来型…任意後見契約だけを締結

 

 

①の即効型は、任意後見契約と同時に任意後見監督人の選任申立をすることで、すぐに任意後見人の支援が始まります。

②の移行型は、任意後見契約の内容の実現は将来意思能力が低下した際に、任意後見監督人を選任することにより実現させるが、現時点で支援してほしい内容を別途「みまもり契約」や「財産管理契約」を通常の委任契約として締結し、任意代理人に支援してもらいます。

③の将来型は、現時点では生活に不安はないので、将来のために支援内容を決めて任意後見契約を締結し、意思能力が低下するまではそのままの生活をしていきます

 

任意後見制度を利用する上では、本人の意思や生活状況、周りの方の支援の状況等を踏まえてどの形が一番ふさわしいか、を考え選択する必要があります。

また、将来のことまで見据えて契約内容を締結していかなければ、様々なリスクや不安に対応できません。

 

任意後見手続きには、専門家への相談をお勧めいたします。

当法人では、任意後見契約内容について、将来のことを考え様々なご提案をさせて頂きます。お気軽にご相談下さい。

 

 

お気軽にご相談ください。

遺留分の放棄② (2020.08.06)

【遺留分の放棄②~相続開始前編~】

 

前回のトピックスで、相続発生後の遺留分の放棄について取り上げました。

⇒【遺留分の放棄①】

今回のトピックスでは、相続開始前の遺留分の放棄をテーマにお話をさせて頂きます。

 

被相続人が亡くなる前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要となり、遺留分を放棄する方が家庭裁判所に申立をして手続きをする必要があります。

前回の、被相続人が亡くなった後の遺留分の放棄と比べて、手続きのレベルは格段に上がり、思うような結果が得られないことも少なくありません。

この、被相続人が健在中の遺留分の放棄は、限定承認の手続きと並び、相続手続きの中で極めて難易度が高い手続きと言っても過言ではないでしょう。

 

それでは、当法人の相続チームの司法書士が、実際に手続きをした事例を基に手続きの概要を見ていきましょう。

下記の相続関係を参照してください。

上記の相続関係において、遺言者Aは、生前にx土地を長女cに生前贈与をし、自分の亡き後は自宅を長男に相続をさせたいと考え、自宅を長男Bに相続させる旨の遺言を書き、長女Cには今すぐ贈与登記を実行したいと、当法人の司法書士に相談を持ち掛けました。

 

この相談を受け、当法人の司法書士は、

●生前にX土地を長女Cに贈与すると、多額の贈与税及び登記費用、不動産取得税がかかる

相続開始時において、長女Cから長男Bに対して遺留分侵害額請求権の行使をされる恐れがある
※長女Cが生前贈与を受けていれば、特別受益を主張して遺留分請求に対抗できる余地はある

上記を懸念して、遺言内容を『自宅は長男、X土地は長女C』との、遺留分を確保した遺言作成を提案しました。

しかし、遺言者Aは自己の相続開始後、遺言内容が実現出来るとも限らず、将来長男長女の関係がどうなるかも分からないことから、生前に長女Cに遺留分相当額を確保した贈与をする代わりに、自分の死後は長男の自宅相続について一切異論を唱えてほしくないという強い願望があり、どうしても上記のスキームで手続きをしてほしいと言ってきました。

 

そこで、当法人の司法書士は下記の内容を提案しました。

①長男Bに自宅を相続させる旨の遺言を書く

②長女Cに生前贈与としてX土地を贈与する
(但し、贈与税率に比べ相続税率が安くなることから、相続時精算課税制度の選択2500万円までは贈与税が非課税になる)

③長女Cに遺言者が生前中に遺留分放棄の許可審判を家庭裁判所に申立てもらう

 

上記の内、③が今回のテーマであり、手続きに非常に苦慮しました。

なぜなら、遺言者生前の遺留分放棄は、前述のとおり家庭裁判所の許可が必要であり、この許可は各家庭裁判所の裁判官の裁量が大きく影響し、一定の基準はありますが、画一的な許可基準がないからです。

一定の基準としては、下記の基準があります。

①遺留分放棄者の自由意思による申立であること
②遺留分放棄に合理性・必要性があること
③生前贈与等の代償性があること

上記の許可基準で、最も重要視されるのは①の自由意思に基づく申立です。

なぜなら、本来遺留分とは、遺言によっても侵害出来ない、法律で認められた最低限の相続分であり、遺言者の圧力でその遺留分を失ってしまうという、不合理な結果をさけるためだからです。

幸い、今回のケースでは、遺留分4分の1相当のX土地の生前贈与があり、贈与税の申告書を申立に添付した上、長女Cも遺留分請求に関しては全くといっていいほど興味を示していなかった為、申立書に自由意思であることを存分にアピールしていく事が出来ました。

自由意思による申立であることの間接証拠として、見返りとして既に生前贈与を受けている等の事情を細かく審理され、実際の許可審判がなされます。

したがって、単に遺留分を事前に放棄しておきたいからとか、結婚の許可を親からもらう為に遺留分を放棄するとか言った事情で、遺留分の放棄が認められることはまずない、と言って過言ではありません。

 

遺言者の生前中に遺留分の放棄の許可審判の申立などは、相続専門の司法書士又は相続専門の弁護士に相談をされることをお薦め致します。

当法人では、1000件近くの相続手続きを手掛けてきた相続専門の司法書士が在籍する相続専門チームがあり、このような特殊な事例にも対応することが可能です。

お悩みの方は、是非一度司法書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談下さい。

 

 

お気軽にご相談ください。

遺留分の放棄① (2020.08.04)

【遺留分の放棄について①~相続開始後編~】

 

以前のトピックスで、遺言と遺留分に関するトピックスをいくつか上げさせて頂きました。

≪遺留分に関するトピックス≫

⇒【遺言書と遺留分請求】

⇒【遺留分制度の見直し】

⇒【遺留分と生命保険】

今回は、実際に当法人の司法書士が相談を受け、扱った特殊な事例として、遺留分の放棄をテーマにお話をさせて頂きたいと思います。

 

まず遺留分とは、法定相続分とは別個の権利で、一部の相続人(相続人が兄弟姉妹・甥姪には遺留分は認められない)にのみ認められた、最低限保障されるべき相続分のことをいいます。

従って、被相続人が遺言や家族信託を組成する中で、特定の相続人のみに遺産を承継させたりする場合(他の相続人の取り分が一切ない場合)に問題になります。

通常、遺留分は相続人が直系卑属(子・孫)であれば法定相続分の2分の1は保障されます。

また、相続人が直系尊属(親・祖父母)のみである場合は3分の1が保障されます。

遺留分放棄のやり方には、被相続人の生前中にするものと、被相続人の死後にするものに分けられますが、今回は、被相続人死亡後の遺留分放棄についてご説明します。

 

≪相談事例≫

下記の相続関係において、被相続人Aが遺産の全てを長男Bに相続させると遺言を残して死亡しました。

相談者Bは、被相続人Aが書いた自筆証書遺言を片手に当法人の司法書士に相続手続きを依頼。相談者Bは、Cに4分の1(法定相続分2分の1の2分の1)の遺留分が発生することを知っており、どうすれば一番良いだろうか、と相談をされました。

被相続人の死亡後の遺留分の放棄の手続きには、法律上特に決まった要式行為(公正証書や裁判所への申立でするなど)を求められておらず、受遺者等への意思表示のみで足りるとされています。

この意思表示は口頭でも足りますが、実務上は、後日言った言わないのトラブルになったり気が変わったりした時など、遺留分請求された場合に対抗する措置として、きっちりと書面に残して証拠保全をしておいた方が良いでしょう

上記の事実関係及び法律効果を熟考した末、相談者Bに下記の方法をご提案しました。

①Cに対して遺留分の放棄の意思確認をすること
②Cに相続放棄手続きをしてもらうこと

但し、②の相続放棄手続きは、ある程度C側で裁判所に申し立てをしてもらい、一定のやりとりを裁判所としなければならない点や、相続放棄の審査が終了するまでの間(通常1か月)は申立を取り下げることができる点(手続き終了後は撤回は出来ません…民法919条1項)等のデメリットを説明しました。

相続放棄申立中に、万が一Cの気が変わり申立を取り下げられると話の流れは大きく変わります。

上記提案の内①の遺留分放棄の意思表示をCにしてもらうことを相談者Bにおいて意思決定されたので、後日、当法人の司法書士がCに、相続についての意向確認の手紙を送り、コンタクトを取りました。

結果、BとCの話し合いの末、Cは被相続人との関係性が疎遠であったこと及び相談者Bが献身的に被相続人の介護をしていた事実を受け、遺言の内容及び遺留分の一切を放棄するとの意思表示を確認出来たため、話し合いの当日、当法人で作成した遺留分放棄証書に実印を頂戴し、証拠保全を完了しました。

最終的には、遺言の検認手続き及び遺言通りの相続手続きを完了し、加えて遺留分権利者からの遺留分請求への対抗措置を準備することができ、依頼者は安堵の表情を浮かべておりました。

 

相続手続きには、それぞれのご家庭に違った悩みがあり、一件一件問題解決の方法が違います。

当法人には、様々な問題解決をしてきた相続専門の司法書士が在籍しております。今回取り上げたような、遺留分放棄等滅多に関わらない案件にも積極的にトライして解決に導いていきます。

是非一度、お気軽にご相談下さい。

 

 

お気軽にご相談ください。

自筆証書遺言と物件の同一性 (2020.07.31)

【自筆証書遺言と物件の同一性】

 

以前のトピックスで、自筆証書遺言について取り上げました。

⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】

⇒【遺言書の検認】

公正証書遺言と法務局で保管された自筆証書遺言(令和2年7月10日より保管制度開始)以外の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。遺言書の検認を受けていなければ、不動産の名義変更登記の申請、預貯金解約等の相続手続きをすることができないからです。

しかし、検認を受けたからといって、その遺言書を使って不動産の名義変更等を行えるとは限りません。遺言書の記載内容が明確でないために、遺言書だけではその内容を実現できないケースがしばしば見受けられるのです。

本稿では、そのような事例を1つ紹介いたします。

 

≪事例≫

相続人からの遺言書に関するご相談。お亡くなりになった方は生前に自筆証書遺言を作成していました。遺言書は検認手続き済みです。

遺言には「自宅はAに相続させる」「別宅はBに相続させる」と記載されていました。住所などの記載はないものの、以前よりお亡くなりになった方から遺言内容を聞いていたため、相続人間では対象物件がどれになるのか合意済みで、特に争いはありません。

しかしこの事例、遺言書に基づく不動産の名義変更について、事前に登記所に照会をかけたところ、受理できないとの回答を受けました。

いったいどういうことなのでしょうか?

 

 

1.財産等の特定方法

不動産の名義変更を登記所に申請する場合、対象となる物件を正確に特定しなければなりません。今回のケースであれば、登記簿謄本の記載に従って、少なくとも

●土地なら所在、地番
●建物なら所在、家屋番号

を遺言書に記載する必要があります。これらの情報を知るには、不動産ごとの登記簿謄本の確認が必要です。

 

2.問題点

上記1で挙げた情報がないと、遺言書で書かれている不動産と、名義変更の対象となる不動産が同じ物件なのか登記官が判断できず、遺言書を使って不動産の名義変更することができないといった不具合が生じます。

しかし、ご自身で作成する自筆証書遺言の場合、こういった形式的な事情を知らずに住居表示(=住所)で記載されることが多く、この住居表示と対象物件の所在・地番等が同一の物件であることを申請者側で示さなければなりません

今回の遺言書では「自宅」「別宅」としか記載されていないため、まずはその所在等を明らかにします。また、ここでいう自宅・別宅とは建物だけなのかそれとも敷地である土地も含むのかも併せて検討が必要となります。

 

3.遺言の内容が不明確な場合の基本的な考え方

遺言書の内容が不明確な場合、特定の条項の解釈をどのように行うべきか、下記の最高裁判例があります。

 

≪最高裁判決 昭和58年3月18日≫

遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し、当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。( 一部抜粋 )

 

なんだか難しい表現ばかりで解りづらいですよね。

要約すると、『遺言書の特定の部分が不明確であった場合、杓子定規に文言の字面だけで判断するのではなく、遺言書の全体との関連性や諸事情を考慮することも認めていますよ』という事なのです。

よって、内容が不明確な遺言がある場合には、この判例を前提として検討する必要があります。

 

4.対応方法

遺言書・対象不動産の登記簿謄本・お亡くなりになった方の戸籍附票謄本などを集め、各不動産の所在地を管轄する登記所に事前相談を行います。

この際、遺言の対象となる不動産と、名義変更の対象として提示した不動産が同じものかどうかの判断は、登記官に委ねられます

よって、案件によって、相続人全員の署名・実印済み上申書(印鑑証明書付き)の追加提供を求められたり、遺言書による名義変更を受け付けてもらえないといったことが起こるのです。

 

 

自筆証書遺言はご自身だけで気軽に書けるメリットがあります。しかし、作成時に適切なサポートがないと、ご自身の想いを望んだ形で遺せないという大きなデメリットも存在します。

上記のような事例はほんの一例であり、実際には検認手続きをするまでもなく無効と判断されてしまった件や、登記には問題なく受理されたが、金融機関の解約手続きでかなり危うい状況に陥りそうになった件(最終的には何とか受理されましたが、個人でお手続きされていたらまず突っぱねられていたでしょう。)なども、実は多く見受けられます。

大切なご遺産を確実な形で遺したいとお考えの方は、まずは専門家へご相談する事をお奨めいたします。

遺言をお考えの方は是非一度、司法書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。

 

 

お気軽にご相談ください。

任意後見制度① (2020.07.28)

【任意後見制度①】

 

以前のトピックスでは「法定後見制度」の概要をご説明させて頂きました。

⇒【相続手続きと法定後見制度】はこちら

 

ところで、みなさまは「任意後見」という制度をご存じでしょうか。

お客様からは、

“名前は聞いたことがあるけど、内容がよくわからないから教えてほしい”

“成年後見人の制度とはなにが違うの?”

というようなお話や、ご相談・ご質問をよくお聞きします。そこで今回は任意後見制度の概要についてご説明致します。

 

 

一.成年後見制度の概要

まず、制度の枠組みとして「成年後見制度」の中に「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。

そして、「成年後見制度」とは、判断能力が不十分な方々を法律面や生活面で保護したり支援する制度のことです。

この「成年後見制度」は、

①ノーマライゼーション
②自己決定の尊重
③身上配慮義務

という3つの理念のもと、「後見人」は単に財産を管理するに止まらず、本人の生活を支える役割を担っているといわれています。

 

私たちは誰でも歳をとります。そして、年齢を重ねるとどうしても判断能力が落ちてきてしまいます。

判断能力とは、“こういう行動をすると、どういう結果になるか判断できる能力”のことをいいます。年齢を重ねて判断能力が落ちてきたときに、騙されて高価な買い物をさせられたり、自分の財産を管理できなくなってしまったりと、沢山の不安が考えられます。

そんなときでも安心して生活が出来るように「成年後見制度」が存在します。

成年後見制度を利用して、自分らしく生きることを支援していくことが、後見人の大きな役割となっています。

 

 

二.法定後見制度と任意後見制度の違い

●法定後見制度 … すでに判断能力が不十分な人に代わって、法律行為をする制度

●任意後見制度 … 今は元気だが、将来判断能力が不十分になった時に備える制度

 

法定後見制度と任意後見制度との一番の大きな違いは、“今、判断能力が十分かどうか”という点です。

任意後見制度は「後見を利用する人」と「後見人となる人」との契約になります。そのため、後見を利用する人が「この人に○○をお願いしたい」「○○なときには○○をしてほしい」と明確に考え、伝えられることが必要となります。

また、法定後見制度は家庭裁判所に申し立てをして、家庭裁判所が成年後見人を選任するのに対して、任意後見制度は将来の不安に備えて自分で後見人になってほしい人と契約をし、将来判断能力が不十分になった時に希望通りの人が後見人になる制度になります。

 

 

 

三.任意後見制度の流れ

任意後見制度のおおまかな流れは下記のようになります。

 

1.任意後見の3つのパターンからどのパターンにするかを選択する

①即効型 … 契約と同時に任意後見監督人申し立てを家庭裁判所におこなう
②移行型 … 任意後見契約と任意代理契約を締結する
③将来型 … 任意後見契約だけを締結する

     ↓

2.契約内容を決定する

任意後見契約の内容を詳細に決めていきます。また、移行型の場合は合わせて任意代理契約の内容も決定していきます。

     ↓

3.公正証書にて契約書を作成

将来任意後見人となる人と契約を締結します。この段階では、まだ任意後見の効力は発生せず、将来に備えている状態です。この時の将来任意後見人となる方を「任意後見受任者」と呼びます。

     ↓

~~~本人の意思能力低下~~~

4.家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立て

     ↓

5.家庭裁判所が任意後見監督人を選任

     ↓

~~~任意後見契約の効力発生~~~

6.後見人としての支援開始

任意後見受任者」から「任意後見人」となります。

 

 

お手続きの流れの各項目ごとに注意するべき点があります。任意後見制度の利用にあたっては、専門家を交えて相談ご検討していくことをお勧めいたします。

当法人では任意後見制度の利用にあたって、ご相談から契約内容の精査、当法人にて任意後見受任者になるお手続きまでご提案させて頂きます。お気軽にご連絡下さい。

 

 

お気軽にご相談ください。

遺言書の検認 (2020.07.22)

【遺言書の検認】

 

以前のトピックスで、公正証書遺言と自筆証書遺言について取り上げました。

⇒【遺言の種類と書き方~公正証書編~】
⇒【遺言の種類と書き方~自筆証書編~】
⇒【遺言が無効となったケース~公正証書遺言編~】
⇒【遺言が無効となったケース~自筆証書遺言編~】
⇒【自筆証書遺言書保管制度について】

 

公正証書遺言と法務局で保管された自筆証書遺言(令和2年7月10日より保管制度開始)以外の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

遺言書の検認を受けていなければ、不動産の名義変更登記の申請、預貯金解約等の相続手続きをすることができないのが通常です。

今回のトピックスで改めてこの『検認』について触れていきましょう。

 

 

≪目次≫

1.検認とは?

2.検認手続きをしなかったらどうなる?

3.検認手続きの流れ

4.自筆証書遺言の落し穴

 

 

1.検認とは?

自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した人が、自分の都合のいいように遺言書の内容を変更したり、遺言書を破棄したりすることを防止するため遺言書の検認が行われます。

検認手続きでは、相続人が集まって遺言に書かれている内容を確認し、遺言書をその時の状態で保存します。検認手続きを終えると、検認済証明書を発行してもらえるので、裁判所で検認を受けた遺言であることを証明できます

 

【検認の申立てをする人】

・遺言書を保管していた人
・遺言書を発見した相続人

相続開始を知った後、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求なければなりません。

 

【申立先】

遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申立てを行います。

 

【費用】

・遺言書1通につき、収入印紙800円

・連絡用の郵便切手(各家庭裁判所によって異なります)

 

【添付書類】

・遺言の検認申立書
・遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の(現在)戸籍謄本
・相続関係が確認できる戸籍謄本
・受遺者がいる場合には受遺者の戸籍謄本

※戸籍謄本は、法定相続情報一覧図の写しを提出すれば、基本的には提出する必要はありません。但し、ケースによっては一部の戸籍謄本等の提出を求められることがあります。詳細は管轄の裁判所の指示に従ってください。

 

 

2.検認手続きをしなかったらどうなる?

検認手続きをしていなかった場合、最終的に名義変更等の遺言執行をすることが出来ません。

なぜなら自筆証書遺言は、そのままでは被相続人本人の自署による遺言書かどうかの判断出来ない為、登記や預貯金解約等のほとんどの名義変更手続きにおいて、遺言書の検認後に裁判所から発行される遺言書検認済証明書遺言書検認調書謄本の提出を求められるからです。

検認をせずに遺言執行手続を行った場合、5万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります。

また、封印のある遺言書は、検認時に家庭裁判所で相続人の立会いの上で開封する必要があり、こちらも勝手に開封してしまった場合、5万円以下の過料が課される可能性があります。

 

 

3.検認手続きの流れ

自筆証書遺言を発見したら、まずは相続人や受遺者から家庭裁判所に検認申立てをする必要があります。申立てから検認期日(検認を行う日)が開かれるまでに約1ヶ月程度かかります。

相続人・受遺者には、申立後に裁判所から検認期日が通知されます。申立人以外の相続人が検認期日に欠席した場合にも、検認手続きは行われます。

期日では申立人から遺言書が提出され、出席した相続人の立会いのもと封筒を開封し、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などの検認期日現在における遺言書の内容を確認します。このとき相続人に対し、遺言が自筆であるか、押印が遺言者のものであるかどうかを確認されます。

検認手続き後、検認年月日・立会人の氏名・住所・立会人の陳述の要旨等が記載された検認調書が作成されます

遺言執行後に登記や預貯金解約等の名義変更をする上で、遺言書に検認済証明書がついていることが必要となるケースが大半ですので、検認済証明書の交付を請求します。検認済証明書の交付は、検認期日が行われた日のうちに請求することができます。

 

4.自筆証書遺言の落し穴

家裁での遺言検認手続きが無事終わり、ようやく様々な手続きを進めていこうとした時、大きな落し穴が潜んでいる点に注意する必要があります。

 

①時間がかかる

遺言書の検認申立をするには戸籍謄本等の必要書類を収集しなければなりません。相続人が多数いたり、被相続人が何度も転籍していたりすると、戸籍の収集だけでも1ヶ月以上かかることもあります。

ようやく必要書類がすべて集まり、いざ検認申立てをしても、検認期日を迎えるまでに約1ヶ月の期間がかかります。その間、相続に関する手続きが止まってしまいます。

ここで注意しなければいけないのが、検認に時間がかかってしまったからといって、相続放棄の申述期限(相続発生後3ヶ月)や相続税の申告期限(相続発生後10ヶ月)などは延長されない、という点です

その後の相続手続きの中で思わぬ債務が発覚したが相続放棄の申述期限を過ぎてしまった、などといった事態に陥っては洒落になりません。

また、預貯金などの口座は被相続人の死亡が判明すると凍結されます。被相続人の口座が凍結されてしまうと、当然その口座での引き落としや引き出しは一切できなくなります。検認手続きが終わるまで相続手続きが滞ってしまうと、残された相続人の生活に支障が出てしまう可能性もあります

※民法改正により、法定相続人であれば一定の要件を満たせば「預貯金の仮払い請求」が可能になりました。(令和元年7月1日施行)

⇒【預貯金の仮払い制度】

 

②遺言内容の有効性は別問題

多くの人が考え違いをしてしまうのですが、検認を受けたからと言って、その自筆証書遺言が有効であると確定するわけではありません

検認の目的はあくまで証拠保全です。要するに、この遺言書は、裁判所でこの期日に検認しましたよ。という事実を証明できるだけであり、その後の相続手続きでその遺言書の内容通りに手続きを進める事を保証しているわけではないのです。

せっかく時間をかけて検認申立を終えても、遺言書としての効力が無ければ元も子もありません。

 

③費用がかかるケースもある

遺言書の検認申立てをする際、多くの必要書類の収集や申立手続の書面を用意する必要があります。

申立人の事情により本人が手続きを進められない場合、司法書士等の代理人に依頼する必要があれば、その依頼費用がかかってきます。

 

 

いかがでしたでしょうか。自筆証書遺言は公正証書遺言と比較して気軽に書けるメリットがある反面、その後の相続人や受遺者の手続が煩雑になる事や、何よりご自身の想いを望んだ形で遺せないという大きなリスクがあります

当法人では、遺言を検討されている方にはやはり、公正証書遺言をお勧めしています。

多少のお費用はかかってしまいますが、相続に関して豊富な知識を持つ専門チームが、ご依頼者様の意思を的確に反映し、煩雑なお手続きをしっかりとサポートさせて頂きます。

また、どうしても自筆証書遺言を遺したいという場合でも、遺言内容へのコンサルタントという形でサポートさせて頂きます。

遺言をお考えの方は是非一度、司法書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。

 

 

お気軽にご相談ください。

遺産分割協議と債務整理手続き (2020.07.16)

【遺産分割協議と債務整理手続き】

 

前回までのトピックスでは、相続手続きのみに着目してトピックスを掲載してきましたが、今回は相続と他の手続きの関連という観点から、遺産分割と債務整理手続きとの関連をご説明させて頂きます。

数は多くない事例ですが、ご相談を受けて「これは、、」とハッとした事例を記事にしたいと思います。

 

1.簡単な相続のご相談、のはずが

上記の相続関係において、被相続人の遺産は自宅の土地建物のみであり、長男が全て相続することで話が進んでおり、手続きのご相談に来られました。

相続税が課税されるリスクもなく、担当の司法書士が「今回はスムーズに手続きが進みそうだ。」と思いながら、談笑交じりに各種委任状等に署名捺印をもらっていた矢先のことです。

「しかし先生、弟は困ったもんで、消費者金融からお金を借りすぎて支払いが滞り、今とある弁護士法人で民事再生手続き中なんですよ。弟も大分反省しているみたいですが、困ったもんです」

これから、遺産分割協議書を作って判を貰おうとしている中でのこの長男様の何気なく発した一言に、担当の司法書士は冷や汗をかいたそうです。

 

しかし、いったいどういう事でしょう?

 

2.民事再生手続き中に相続発生すると

民事再生手続きとは、『借金の返済が困難となった人が、裁判所に申立てを行うことによって、借金の減額を目指す救済制度』のひとつです。

その為、土地や家屋と言った価値の高い資産を保有したままで手続きを行うことは、この制度の趣旨に沿ったものではありません。なぜなら、個人再生には清算価値保障の原則というものがあり、資産が多ければそれだけ返済額も高額となる仕組みとなっているからです

逆に、民事再生手続き中に相続が発生し、遺産を貰えるのに自己の判断で遺産分割協議により相続分を放棄してしまった場合、この事実が裁判所に明るみになると民事再生手続きに支障をきたしてしまう恐れがあります。

 

もう少し分かりやすく言うと、

①相続で遺産を取得すると弁済総額が上がる。

②遺産分割協議において自己の相続分を放棄した事実が裁判所に明るみになってしまうと、再生計画が認められず民事再生手続きが否認されてしまうおそれがある

今回は②のケースだったのです。

 

後日、当法人から民事再生手続きを受任している弁護士法人にご連絡をして、内容を詳しく聞き打合せたところ、二男様は今回のお父様の相続について、家庭裁判所に正式に相続放棄の申述をしてもらうことで話が纏まっていきました。

遺産分割協議の中でする相続分の放棄と違い、家庭裁判所へ申し立てる相続放棄の申述は、初めから相続人で無かったものとみなされる為、民事再生手続き中に行っても再生計画に影響を及ぼすことは一切ないのです。

ただし相続放棄には、相続開始の事実を知ってから3か月以内に申立てをしないと原則認められませんので注意が必要です。

また、今回の相続関係では、相続放棄者(二男)以外にも第一順位の相続人(長男)がいたから良かったものの、第一順位の相続人が一人であって、かつその相続人が相続放棄をしてしまうと、相続人がガラリと変わってしまいます。

⇒【相続放棄と法定相続人】

 

もし、相続人の中の一人に債務整理手続き中の方がいる場合、お早目にその事情も含めご相談頂ければと思います。

是非、司法書士法人鴨宮パートナーズにお気軽にご相談下さい。

 

 

お気軽にご相談ください。

所有者の住所が異なる相続登記 (2020.07.14)

【所有者の住所が異なる相続登記 ~被相続人の最後の住所と登記簿上の住所が異なる場合~】

 

相続が発生して、相続による不動産の名義変更の準備を始めたところ、不動産の所有者の登記簿上の住所が亡くなった時点での住所と一致しない、というケースがよくあります。

この様な場合は、通常よりも複雑な確認作業を必要とします。今回はこの確認作業の流れと必要な書類について取り上げてみましょう。

 

前提:住所変更登記は不要

不動産の所有者Aさんがご存命の場合、例えば売却や贈与等でその物件を手放す事になったタイミングで、住所の変更があれば変更登記をしなければなりません。

しかし相続に限り、変更登記をしないまま所有者が亡くなった場合は、あえて亡くなった時の住所に変更する必要はありません。

 

・被相続人と登記上の所有者が同一人物であることの証明は必要

ただし、その住所のまま相続登記をしようとした時、過去に住所移転をした経緯を知らない法務局の登記官からすると、登記簿上のAさんが、違う住所で亡くなったAさんと同一人物かどうか、一見すると判断がつきません

そのため、亡くなったAさんがその不動産の所有者であったことを証明する必要があります。

具体的には以下の順序に従って確認作業を進めていきます。

 

1.被相続人の戸籍(本籍地)を確認する

所有者となる被相続人Aさんの出生から死亡までの全戸籍において本籍地を確認し、登記簿上の住所と合致するかをチェックします。これは、過去の登記法において、登記をする際に本籍地を住所として登記していた時期があったためです。
(現在は本籍地ではなく、住所により登記します。)

合致する本籍地の記載がある戸籍があれば、その戸籍をもって、Aさんが不動産の所有者で間違いないことを証明することができます。

 

2.住民票の除票や戸籍の附票の除票の住所を確認する

被相続人Aさんの住民票の除票戸籍の附票の除票改製原附票を含む)に記載されている、現住所より以前の住所等を確認します

もし、登記簿上記載されている住所と同じものがあれば、それらを添付して登記手続きを進めることができます。

※住民基本台帳施行令の一部改正(令和元年6月20日施行)により、現在の戸籍の附票の除票及び住民票の除票の保存期間は5年間から150年間に延長されました。しかし、それ以前に保存期間を経過してしまっているものは、交付を受けられないため注意してください。

 

3.所有権に関する被相続人名義の登記済証を提供する

上記1,2で住所がつながらない場合において、所有権に関する被相続人Aさん名義の登記済証を添付すればよいことになりました。
(平成29年3月23日民二第175号通達)

登記済証とはいわゆる権利証のことです。登記済証はこの世に一つしか存在せず、しかも、基本的に所有者自身が保管しているものです。

よって、この書類の提供があれば、登記簿上の所有者Aさんと被相続人Aさんが同一人物であるとしてもよいだろう、という趣旨になります。

 

4.登記簿上の住所を管轄する役所に、不在籍証明書・不在住証明書の請求をする

上記1~2によっても登記簿上の住所に合致する記載が一切見当たらず、かつ3によることもできない場合は、不在籍証明書・不在住証明書・相続人全員で作成した上申書などを管轄法務局へ提出する方法が考えられます。

※個々のケースで何を提出すべきかは、管轄法務局での取り扱いを事前に確認する必要があります。

 

本来、住所変更登記は所有者が生前に行うべきものなのですが、手間や費用がかかるため、実際には放置している方が多いのが現状です。

今回ご紹介したのはほんの一例であり、相続手続きには複雑な確認作業を要する場合が多くございます。相続による不動産の名義変更をされる場合は、専門家に相談することをお勧め致します。

どうぞお気軽に司法書士法人鴨宮パートナーズまでご相談ください。

 

 

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相続放棄の注意点 (2020.07.10)

【相続放棄の注意点】

 

以前のトピックスで、相続放棄手続きについての概要をご説明致しました。

⇒【相続放棄と法定相続人】はこちら

⇒【借金等がある場合の相続手続き①】はこちら

今回は、裁判上の相続放棄手続きの中で、注意しなければならない点をより詳しく取り上げていきます。

 

≪目次≫

1.相続放棄する際にやってはいけないこと

①債務(借金や税金)の支払い

②葬儀費用の支払い

③入院費の支払い

④被相続人の賃貸住宅の解約や片付け

⑤被相続人が貸していたお金の請求

2.民法940条第1項の管理義務

 

 

1.相続放棄する際にやってはいけないこと

単純承認とみなされる行為をしてしまうと、裁判上の相続放棄ができなくなってしまいます

単純承認とは、『相続する意思(=相続することを承認する)と認められる行為をすること』です。民法には「単純承認をしたときは、無限に被相続人(=亡くなった方)の権利義務を承継する。」と規定されているので、相続を放棄することができません。

お客様より「どんなことをしたら単純承認になるの?」「これをしたら相続放棄できないの?」というご質問を頂くことがあります。

ここで具体的にいくつかみていきましょう。

 

 

①債務(借金や税金)の支払い

相続財産(=亡くなった方の財産)から支払いをしてしまうと、単純承認したものと扱われてしまいます。

つまり、亡くなった方の預金を債務支払いに充ててしまった場合は、相続放棄が出来なくなってしまいます

しかし、相続人自らの財産を支払いに充てた場合は単純承認に当たらないとされています。死亡保険金も相続人の固有財産です(保険金は亡くなった方の財産ではなく、相続人の財産になります)ので、相続人が請求して受け取った死亡保険金をもって支払いに充てても単純承認にはあたりません

 

②葬儀費用の支払い

葬儀費用については、相続財産から払っても相続人の財産から払っても相続放棄は認められます

注意が必要なのは支払う内容になります。火葬や埋葬にかかった費用、お寺に支払う費用等は相続財産から支払っても単純承認には当たらないとされています。支払った内容が「相当範囲内」であれば、相続放棄が認められます

 

③入院費の支払い

入院費を相続財産から支払った場合、単純承認とみなされる可能性があります

そのため、相続放棄をしようと思っている場合は、相続財産からの支払いをすることは避けましょう。

 

④被相続人の賃貸住宅の解約や片付け

亡くなった方がお住まいだった賃貸住宅を解約することは単純承認とみなされます

また、部屋の片付けをする際も注意が必要です。ごみの処分をする程度であれば単純承認には当たりませんが、遺品や家財道具については処分してしまうと単純承認に当たる場合があります。相続放棄をする場合は、その旨を伝え手続きをしないほうがよいでしょう。

 

⑤被相続人が貸していたお金の請求

被相続人が貸していたお金をその相手に請求し回収した場合は、単純承認にあたります。その場合、相続放棄ができなくなってしまいますので、注意が必要です。

 

上記は一般的な内容になりますので、実際には具体的内容により判断されます。

相続放棄を検討されている場合は、基本的には単純承認にあたる可能性がある行為をすることは避けましょう。

 

 

2.民法940条第1項の管理義務

相続放棄をすると「最初から相続人ではない」こととなりますので、借金を払う必要もありませんし、不動産の固定資産税も払う義務もなくなります。

しかし、全ての義務から免れるか、というとそうではないのです。

それが、「民法940条第1項の管理義務」といわれるものです。どういうものか事例で見てみましょう。

(例)父が亡くなり、母も既に亡くなっているので相続人は長男のみ(祖父母も亡くなっていたとします)。父には多額の借金があったため、長男は相続放棄をしました。父には姉がおり、長男は自分が相続放棄をしたことをその伯母には伝えていませんでした。

父の相続財産には父が住んでいた古い家があり、現在は空家となっています。その空家の壁が壊れ隣宅に倒れてしまい、隣人から長男に損害賠償請求がありました。相続放棄をしている長男が損害を賠償する必要があるのでしょうか。

 

上記の例の場合、長男の方は相続放棄をしていても損害を賠償しなければならない場合があります

それは民法940条第1項で、『相続放棄をした人は、その相続放棄によって相続人になった人が相続財産の管理を始めるまで自分の財産におけるのと同一の注意をもってその財産の管理を継続しなければいけないこと』となっているためです。

つまり、上記例の場合、長男の相続放棄によって相続人となった叔母に相続放棄したことを伝えていないために、叔母が自分が相続人となったことを知らないので、相続財産を管理をすることができないのです。そのため、長男はその間に生じた損害を負担しなければならない場合が出てくるのです。

また、自分が相続放棄をすると相続人がいなくなってしまう場合には、相続財産管理人の選任をしないとその管理義務は続いてしまうことになります。

相続財産管理人とは、相続人がいなくなった場合、債権者(=被相続人にお金を貸していた人等)や利害関係人からの申立により裁判所によって選任される、亡くなった方の財産を管理する人のことです。申立には費用も時間もかかりますので、相続放棄する際に他に相続人がいなくなってしまうときは、その後の手続きをどうするかを検討する必要があります。

 

相続放棄手続きには、上記の他にも注意点がありますので、ご自身で判断してお手続きをされると思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。

そのため相続放棄手続きをされる場合は専門家に相談することをお勧め致します。当法人では、相続放棄のお手続きについてのご注意点等をご説明の上、一番最適な方法をご提案致します。

お気軽にお問合せ下さい。

 

 

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特別寄与料について (2020.07.07)

【特別寄与料について】

 

寄与分とは、『亡くなった方の財産の維持または増加について特別に貢献した相続人は、その分法律に定められた相続分(法定相続分)より多くの財産を取得することができる』という制度です。

この制度は、相続人が複数いる場合の、相続人間の不平等を是正するために設けられました。例えば親の家業に従事して親の財産を増やした人や、病気の親を介護して財産の減少防止に貢献した人がいる場合に、法定相続分より多くの財産を取得できるという制度です。

但し、これまで寄与分を受けられるのは相続人に限られまていました。つまり、例えば亡くなった方の息子の嫁が生前に看護していたとしても、寄与分を主張することはできなかったのです

これでは相続人以外が特別の寄与をしても報われないことになってしまいます。そこで相続法が改正され、2019年7月1日以降に開始した相続については、相続人以外でも特別寄与料を請求することができるように条件が緩和されました。

 

≪目次≫

1.特別寄与料を請求できるのは?

2.誰に請求できるのか?

3.特別寄与料はどのように決定するのか?

4.いつまで請求することができるのか?

 

1.特別寄与料を請求できるのは?

特別寄与料を請求できるのは、

亡くなった方に対して無償で療養看護その他の労務の提供したことにより、

亡くなった方の財産の維持または増加について特別の寄与をした、

亡くなった方の親族

が対象となります。

 

①無償で療養看護その他の労務を提供

先に例で挙げた、亡くなった方の息子の嫁が無償で介護してきた場合などが該当します。但し、介護の際に対価として金銭などを受け取っている場合には、特別寄与料を受け取ることはできません

②財産の維持または増加に貢献したこと

例えば亡くなった方の療養看護することによって訪問看護等のサービスを利用せずに済めば、その分財産の減少を防止したといえるでしょう。

③亡くなった方の親族であること

親族とは、6親等内の血族、3親等内の姻族、配偶者の範囲に属するものをいいます。

 

 

2.誰に請求できるのか?

特別寄与料は亡くなった方の相続人に対して請求することができます。相続人が複数いる場合には、その相続人の相続分に応じて請求をすることができます。

特別寄与料が100万円あり、各相続人の相続分がAさんは2分の1、Bさんは4分の1、Cさんは4分の1であるとします。

この場合、Aに対しては100万円の2分の1である50万円を、BとCに対しては100万円の4分の1である25万円をそれぞれ請求することができます。

 

 

3.特別寄与料はどのように決定するのか?

特別寄与料は特別寄与者と相続人との協議によって決まります。

協議によって決まらない場合は、家庭裁判所に協議に変わる審判を請求することができます。その場合家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料を定めることができる、とされています。

特別寄与料を認めてもらうには、介護をした証拠を残しておくことも重要です。

「◯月▲日、8時から17時まで~のようなお世話をした。」

といった詳細な介護日誌を付けておくと認められやすくなります。個人的な生活の記録を記した手帳や日記でも、介護の様子をメモしておくことで証拠に成り得ます。

 

 

4.いつまで請求することができるのか?

前述の特別寄与料を請求する場合には、

・特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六ヶ月を経過したとき

又は

・相続開始の時から一年を経過したとき

までとなっています。

これは、特別寄与請求権者は療養看護等していることから、比較的容易に被相続人の死亡を知ることが出来る場合が多いと考えられ、また、金銭の支払請求を受ける可能性がある相続人の立場を考慮すれば、できるだけ早期に法律関係を確定させる必要があるとの考えから上記の期間制限が設けられました。

 

相続が発生してから六ヶ月、一年という期間は、思いの外あっという間に過ぎてしまいます。

直接的な相続人ではないが療養看護等を通して被相続人の財産の維持増加に寄与した、と考える親族の方は、出来るだけ早めに各相続人に対して、特別寄与料を請求又はお早めに協議をすることをお勧めします。

 

 

 

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